「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 3月12日(金) 晴れ

南東の風 少しだけ波あり 水温21度

 朝こそ放射冷却のせいでやたらと冷え込んだものの、太陽が燦燦と輝く日中は、Tシャツ短パンで過ごせるほどのポカポカ陽気に。

 海も凪いでいたので、予定どおり海に行くことにした。
 そのために昨日は自分たちの船で帰ってきたのだ。

 先ごろ作ったおニューのウェットスーツに包まれているとやはり暖かい。ただし浮力がある分ウェイト数が増えるのが玉に瑕。
 というのも、昨日の起き抜けの背筋酷使のせいで、陸上にいる僕は今、直立歩行をし始めた原人のような格好なので、重いものはなるべく持ちたくないのだ。

 おまけに、その前日に久しぶりに走ってみたところ、先月帰省中に歩き回ったせいでまた痛みがぶり返してしまった膝が、これまでにないくらいに痛くなってしまっていた。
 痛くなる前にやめろという話もあるものの、走っているときはそれほどでもなかったのだからしょうがない。
 で、しかも実は昨日、東村つつじ祭で園内を随分歩いてしまった。もうすでに歩行困難なほどに痛かったのだが、騙し騙しでなんとか乗り切り、そして今日に至っている。

 そんな満身創痍状態でエントリーしてみると………

 これがあなた、アバター状態。
 重力から開放された我が肉体は、なんの負荷もない自由を久しぶりに味わったのだった。

 水温は変わらず21度。
 ところによりこの冬初の20度を記録した。先だっての冷え込みのせいだろうか。
 まだまだ水は冷たい。
 それでもやはり、海中にはジワジワと春の気配が。

 特に探しているわけでもないのに、ウミウシがやたらと目についたのだ。
 まずはこの子。

 イガグリウミウシね。
 なんだか色合いまでが春めいて見える。
 春めいて見えるのに毬栗とはこれいかに。

 お次はこの子。

 シラナミイロウミウシ。
 点のつきどころがよければウサコちゃんになるウミウシなんだけど、ウサコちゃんの点ではなかったので、ちょっと場所をワープしてもらった。
 はい、普通は、このウミウシがこんな真っ赤なカイメンの上を這っているシーンなんて、1000本たて続けて潜ってもまず観られないのです(汗)。

 最後はこの子……というか、コイツ。

 ムカデミノウミウシ。
 その名のとおりムカデチックな細長いウミウシだ。時おりミノの部分をパッと広げるのがカッコイイ。

 とまぁこんな調子で、海中はすっかりウミウシ天国になりつつあるようだ。しかし僕にとってのこの日の新発見は、ウミウシたちではなくこの魚だった。

 スミツキカノコという、アカマツカサの親戚。
 もちろんこの魚を初めて見たというわけではない。
 今日ちょっとお近づきになろうと思っていつもよりも長く観ていたら、なにげにきれいな色合いという以外の彼の身体的特徴に初めて気がついたのである。
 その身体的特徴とは……

 腹ビレを広げた姿がカッコイイ!!

 ね?
 普段は閉じていることがほとんどで、こうやって広げるのは体の向きを変えるときなどのちょっとした弾みで一瞬、って場合がほとんどだから、普通は目にも留まらない。
 でも写真にはちゃんと留まっていたのだった。
 知られざるスミツキカノコの実力を見た。

 さてさて、低水温下でのダイビングの後は眠くなるのが相場。
 昼食後、ポカポカ陽気の下でサマーベッドに寝転んで本を読んでいたら、いつしか眠ってしまい、気がついたらサルになっていた。
 なんたるシロウト焼け………。

 でもまぁ、この昼寝が心地いい。
 このままずーっと寝ていたい………

 ……ああしかし。
 本日は午後3時から島中総出の海岸清掃なのだった。
 毎年シーズン直前にやっているこの作業、今年は水納丸のドック明けが4月に入ってからになりそうだということを受け、急遽水納丸のドック前に行うことになった次第(集めたゴミは水納丸で本島に運ぶため)。

 海岸のゴミを拾いながら延々歩き続ける2時間というのは、まぁフルマラソンに比べればどーってことはないし、作業の最中はなんだかんだと楽しみながらやってはいるものの、終わってみると疲労困憊。
 アフターダイブの昼寝をしたい昼下がり、そして直立歩行をし始めた原人系歩き方&膝イタイイタイ病の身にとっては、まさに試練の2時間なのだった。

 それにしても、昨年末にも一度同じ場所を同じようにやって一度はきれいになったというのに、たった3ヶ月で完全に元の木阿弥。
 世の中は世界規模でエコだエコだと言っているけれど、このゴミの量を目の当たりにすると、地球をあげてのCO2の排出規制なんてのは、夢のまた夢だということがよくわかる。

 そんなこんなで、午後はずっとお日様の下にいたおかげで、なんだか新世界で昼間から酒かっ食らってるおっさんのような顔になってしまったのだった。