「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 9月15日(水) 晴れ一時雨

南の風 おだやか 水温28〜29度

 他所では普通に観られるのに、水納島では滅多に見られないお魚さんがいる。
 また、水納島でも普通に見られるものの、生息水深が深いためになかなか見に行けない場合もある。

 ハナゴンベもそんな魚の一つだ。
 他所で見られる以上にやたらとたくさんいるにはいるんだけど、それは水深30mあたりから始まる崖沿いなので、それを見に行く機会があまりない。

 なので、多くのダイバーにとっては、水納島にはハナゴンベはいないということになっているかもしれない。

 ところが今夏、普段普通に潜っている水深で、たった1匹ながらハナゴンベが居ついているのを見つけた。

 それから2ヶ月ほどたち、今日ついにパシャ。

 周りを見渡しても、やはり彼一人しかいない。
 ゴンベという名前ながら実はハナダイの仲間なので、複数匹で暮らすのが本来の姿。なのにたった一人きりで、彼はずーっとここに居続けている。

 ファインダー越しに観ていると、なにやら不思議的行動をしていた。頭をやや下にしてから体を振るわせつつ上げる動作を繰り返している。
 きっと、居もしないメス相手の求愛行動なのだろう。はたして彼にシアワセは来るのか??

 そんなロンリーハナゴンベがいる付近で、16シーズン目にしておそらく初めて目にする魚を見つけた。

 ご存知、ヒフキアイゴのチビターレ。
 ヒフキアイゴの大人はフツーに目にするけれど、その幼魚となると出会う機会が滅多にない。なにしろ、あれだけの収録魚数を誇る吉野雄輔氏の図鑑にも、ヒフキアイゴのチビは載っていないくらいなのだから。

 そういえばここ何年かは若い個体すら目にしていなかったことを思うと、ひょっとしてヒフキアイゴたちもまた、テングカワハギ同様サンゴがないといなくなってしまう類の魚なのだろうか。

 てことは、今後は少しずつ幼魚を観る機会が増えてくるかもしれない。なんだ、アイゴの子か…とガッカリせずに、その希少価値をしっかり把握してご覧くださいませ。