「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

番外編
シオマネキ日記

2011年 7月18日(月) 晴れ雨晴れ雨のち晴れ

北の風 荒れ模様 

 昨日のこの稿を書いているときに、なでしこジャパンはPK戦をやっていた。
 そして勝ってしまった。

 スゴイ。
 サッカーでアジアのチームが世界の頂点に立つなんて!!

 世界の、特に欧米社会に与えたこの衝撃は、例えは悪いけど、日本が真珠湾においてアメリカ海軍をコテンパンにやっつけたと知ったときの世界のオドロキに匹敵するのだろう、きっと。

 でも戦争とは違い、スポーツ競技の場合はオドロキのあとに称賛の嵐が待っていた。
 その国がどこであれ、素晴らしい結果を示したチームや個人を称える、というのが、この世界の素晴らしさだ。

 それはスポーツに限らない。
 たとえば今般の大震災における被災者の振る舞いにも、世界は称賛の声をあげていた。

 相手が日本人でも、ちゃんと世界は称えてくれるのだ。

 なのになぜ、こと「国」という話になると、いつもどこかしらバカにされているように思えるのだろう??

 それはつまり、世界から見たこの国の為政者たちが、なでしこジャパンとは対極にある存在だからにほかならない。

 さて。
 今日も台風通過中の沖縄地方、午前中は台風っぽくときおり強い雨が降ったりしたものの、概ね晴れていた。
 晴れているけど風が強いので、日中外を出歩いていてもそれほど暑さを感じない(日には焼けるけどね)。

 なので、ものすごく久しぶりに裏浜の干潟を散歩してみた。

 干潟といえば、この生き物。

 ご存知シオマネキ。
 写真はルリマダラシオマネキ。わりと大きくなるシオマネキで、干潟のやや沖側を好んで暮らしている。

 専門家によると、この干潟にはシオマネキが5種類いるそうで、そのうち4種類は我々でも簡単に見つけられる。
 とりわけ簡単なのが、このベニシオマネキ。


甲羅が赤いタイプもいる。

 海岸線から干潟になるすぐのところで見られる。
 こちらはヒメシオマネキ。

 もっと這いつくばるようにして撮るとそれなりに写せるんだろうけど、さすがにドロドロになってまで撮る気はなかったのだった……。

 潮が引くとそこかしこでセッセと餌を漁るシオマネキたちは、危険を察知するとサッと動いて巣穴に逃げ込む。
 だから人間が近くを歩くと、それまでウジャウジャいたカニさんたちは、たちまち姿を消す。

 シオマネキの存在を知っていないと、そこには何もいない、と思ってしまう人もいるかもしれない。

 でもそのままジーッと待っていると……

 シオマネキたちは、恐る恐る穴から出てくる。
 そっちの穴からヒョコ、こっちの穴からヒョコ。
 ヒョコ、ヒョコ、ヒョコ………………

 気がつけば、自分の周りはカニさんだらけになっているのだ。

 シオマネキというのはこういった干潟環境がないと棲息できない。
 昔は沖縄本島の河口域という河口域がこういう環境だったことだろうけれど、残念ながらそういう場所は次々に埋め立てられていて、今ではそうやすやすとシオマネキを観察できる場所がない。
 それまでウジャウジャシオマネキがいたところを護岸工事し、「親水護岸」なるものを作ってシオマネキを絶滅させたりするのだから、見られなくなるのも当然といえば当然だ。

 そういう意味では、水納島の裏浜の干潟はとても貴重な環境ということになる。

 とはいえ、以前にも触れたとおり、陸ガメを見て「ウミガメですか?」と訊いてくる人がいる今の日本で、こんな田舎の島に来てヤモリがいることに本気でビビッている人がいる今の世の中で、シオマネキが見られるなんてことがいったいどれほどの価値として捉えていただけるのか、いささか心もとない。

 実際、シーズン中水納島に数多く訪れる海水浴客のなかで、わざわざ裏浜まで来てシオマネキを見ようなんて人は、わざわざ関東から柏島まで行って「スカテンが見たい」という人と同じくらいレアケースだろう。

 でも。
 当雑貨屋さんには、そういう方々こそがお越しくださるのである。
 こういう小さな島の裏浜に息づく小さな生き物に価値を見出す方々は、同じようにこういう小さな島にひっそりとたたずむ吹けば飛ぶような土産屋にも興味を示してくださるのだ。

 逆にいうと、どこの何という島に来ているのかさえ定かにはわかっていないような大勢の バカタレども 日帰り海水浴客なんてのは、ほぼ当店とは無縁といっても過言ではない。

 だからこそ我々は、裏浜のシオマネキに興味を示してくださるようなお客さんを大事にしていきたい。
 が、残念ながらその数は年々減っているような気がする。

 「ホテルから気軽に日帰り海水浴ツアー!!」

 という「親水護岸」が、シオマネキを愛する人たちを駆逐しているのかもしれない………。