Maybe・9
渡久地港

 

 渡久地港という港は、本部半島に数多ある港の中で最も歴史の長い港といってよく、その昔漁業が盛んだった頃は本部半島でも有数の賑わいを見せていたらしい。
 かつてはこの港から、伊平屋・伊是名、伊江島、古宇利島、瀬底島、そして我が水納島といった各離島航路の船が出ていたのである。
 だから当時は海上保安庁の事務所も渡久地港にあったそうで、なぜそのままこの港をターミナル港にして発展させなかったのか、今考えると不思議で不思議でしょうがない。

 そんなにぎわいも今は昔。
 今では渡久地港といっても、名護あたりのタクシー運転手ですら本部港に行こうとする人がいるくらいにマイナーになっている。
 本部といえばカツオとまで言われていたこの港にあるカツオ漁船は今ではたった1隻。離島航路の船は水納丸1隻。不必要に大きな警察の船がある以外は、いたって鄙びた田舎の漁港である(正確には「漁港」ではないらしい…)。

 でも、やはり古くから港として利用されていただけあって、ここは天然の良港だ。
 満名川の河口にあたり、周囲を山々に取り囲まれ、沖からの波はパッチリーフでさえぎられている。
 うちの船を台風の際に避難させるにあたり、これほど心強い港はない。

 そんな渡久地港を一望の下に見渡せるのがここ、本部大橋だ。
 海洋博の当時に出来たというこの橋のおかげで、船が通れなくなったために伊平屋・伊是名の連絡船は港を変えざるを得なくなった、などという、どこまでが本当だか、でも沖縄ならありそう的話も残っている橋である。
 おそらく渡久地港周辺を車で走った方なら一度ならず通ったことがおありだろう。
 が、その風景を楽しむなら、やはり徒歩で行かねばならぬ。
 車はふもとの路肩(車一台停められるスペースあり)に停め、テクテク坂を上ってみよう。ほら、絶景かな絶景かな………。

 ちなみに、ここからふりかえると、水平線に水納島がポッカリ浮かんでいる。 

オススメ時間帯
午後になって日が傾き始めてからのほうが順光で見られる。
夕方なら、セピアに染まる港と、夕陽をバックにした水納島を両方見られるという特典付き。
 また、水納丸(ニューウィング・みんな)の時間に合わせれば、眼下をその勇姿が通り過ぎていく。