18・男たちの宴

 失態を演じつつも、ワインとイタリアンで心地よい満腹感を味わっていた我々は、次なる店を目指していた。

 家族揃ってハシゴ??

 実は、この夜は若手スタッフ・エーユーさんの呼びかけで、養殖場の有志による飲み会が催されることになっていたので、我々も「打ち上げ」を兼ねて乱入させていただこうということに。

 場所は、前日お昼にお邪魔した、川平のじんべいさん。
 養殖場から近いこともあって、スタッフのうち何名かは川平にお住まいなのだとか。

 その1人エーユーさんは、実はスタッフ中最若手の男性。
 彼の呼びかけに集まったのは……

 ほぼすべてのスタッフのみなさん。
 我々は食事を終えてから到着したから、すでにみなさんいい感じで出来上がっていたんだけど、なかでもとびきり「完成」していたのが、発起人のエーユーさんだった。

 なにやら職場の作業について、先輩スタッフたちに真剣な議論を持ちかけようとなさっているようなのだが、

 「調整のぉ……調整がぁ……」

 と、話の出だしも出だしの部分でエンドレスリピート状態になってしまっているのである。
 座にいるみなさんには、もちろんのこと何がなにやらわかるはずはない。

 でもそのリピート状態がやたらと面白いので、みんなでその話の続きをわざと訊こうとすると、やはり彼は

 「調整がぁ………」

 先には進めないのだった。
 酔っ払いって素敵だ。<グラスを割らなければね。

 酒の席での彼はいつもこんな調子らしく、スタートダッシュをかけたあとは、誰よりも先に沈するらしい。
 他のみなさんも手馴れたもので、座敷の傍らに彼の「寝場所」をちゃんとキープしてあげる。

 そしてさらに酔いが回ったころを見計らって、ご近所さんたちが、ここから徒歩3分という自宅まで彼を送り届けるようになっているらしい。

 今宵もやはり、抱きかかえられつつよろめき出でて……

 家まで連行されていくエーユーさんなのだった。

 家まで送られるっていっても、玄関先まで、ではなくて、ちゃんと布団に寝かしつけられるところまで「送って」もらえるのだ。
 酔っ払いにとってこれ以上のケアがあろうか。
 田舎って素晴らしい。

 ちなみに、翌朝所用あって束の間養殖場を再訪した際、彼はいつもと同じ調子で元気に働いていた。
 ただし、

 「なんも覚えてないです……」

 若いって素晴らしい。
 彼にはそのうち、養殖場の
「隊長」という称号がつくであろう………。

 そんなこんなしているうちに、店には他のお客さんが誰もいなくなっていて、大将まで座に加わっての宴席になっていた。

 誰も彼もみんな気持ちのいいナイスガイ&レディ。
 年齢に関係なく、若々しさと楽しさに溢れた酒の席は、遠い昔にさんざん味わった、学生の頃の部活の飲み会を彷彿させる。

 おかげで正味3日間にも満たないお付き合いでしかないのに、一緒に飲んでいて実に楽しい宴席になったのだった。

 えび屋−Mさんはじめ、スタッフのみなさん、お世話になりました!
 これからも、美味しい美味しい車えびをたくさん育ててくださいませ。

 エーユーさんも頑張ってね!!

 「調整がぁ………」