19・ドライブスルー・グッバイ

 翌朝ホテルで目覚めると、久方ぶりの超二日酔い状態だった。
 思わず僕もつぶやいてしまいそうだ。

 「調整がぁ…」

 それもそのはず、前夜じんべいがお開きになったあと、市街地まで送っていただいたのだけど、なんだかこれにてえび屋−Mさんとお別れというのが名残惜しかったので(酔っ払いの飲み足りなさ感ともいう)、宇宙少年ソラン君の卒業式を翌朝に控えているえび屋−Mさんを無理矢理誘い、市街地でもう一軒入ってしまったのだった。

 その店で撮っていた唯一の写真がこれ。

 何を撮りたかったんだろう??

 キープボトルに「エビエポック」って書かれてあったのが面白かった記憶はあるものの、そのわりにはボトルも途中で切れてるしなぁ……。

 いずれにしても、相当酔っ払っていたのは間違いない。
 えび屋−Mさん、遅くまでつき合わせてしまって申し訳ございません…。

 その報いの二日酔い。
 まったく元気なうちの奥さんがいそいそと朝食に出かけてもなお、僕はベッドで泥のように眠り続けていた。

 幸いチェックアウトは11時までだったから、遅寝ができた。

 なんとか真人間一歩手前に戻り、荷物を再び梱包、11時にはチェックアウト完了。

 この日は二十数年ぶりくらいにレンタカーを借りるのだ。
 そして、11時半頃に養殖場へ、そしてそのあとさらに北上、という予定にしていた。

 が、ホテルからなら養殖場まで30分くらい、というところで、11時にホテルを出発するならともかく、11時にレンタカー屋さんに迎えに来てもらうという段取りでは、とてもじゃないけど11時半に養殖場に着くはずはなかった。

 僕が死亡している間にレンタカーを手配してくれたうちの奥さんは、乗るべきレンタカー自体がホテルまで来ると思っていたらしい………。

 頼んだレンタカー屋さんは、たいていそうであるように空港近くにあった。
 最大手「トヨタレンタリース」がドドンと事務素所を構えているお向かいに、慎ましやかな小さな事務所がある。

 そこでモロモロの手続きを済ませる。
 パックでもなんでもなく、当日のレンタルで、小型普通自動車3日間で8500円ほど。

 昔だったら1日分だよなぁ……。
 そりゃそこらじゅうに「わ」ナンバーが溢れるはずだわ。

 20年ぶりに運転するレンタカーには、カーナビがついていた。
 カーナビがついている車を運転するのは初めて♪

 が。

 ……使い方がわからん。

 使い方がわからんカーナビを操作しながら運転するというのは、携帯で電話しながら運転するよりも遥かに危険だと思うんだけど、そのあたり道交法はどう思っているのだろうか。

 <あんただけじゃね??

 え?そうなの??

 ともかく文明の利器を使いこなせないので、オーソドックスに市内のフリーペーパーに載っている地図を見ながら道の見当をつけた。

 ここ3年連続で石垣に来ているけど、自力で能動的に歩を進めるのは初めてのことだ。
 なんだか新鮮♪

 まぁ、都内を行くわけじゃなし、どこからどう行ってもきっと目的地にたどり着くであろう石垣島内なので、まずはのんびり養殖場を目指した。

 そこで車えびを受け取るのだ。

 例によって今日から二晩Yさん邸でお世話になる予定になっていて、マラソン参加という大義名分も何もない今回、さすがに手ぶらでってわけにはいかない。
 しかも、土産話としてさんざん車えび料理を食べたって話題になるのは必定である。
 となれば、ここはひとつ活車えびを!

 というわけで、贈答用の箱詰めを、事前にえび屋−Mさんにお願いしてあったのだった。そうすれば売り上げにも多少貢献できるし……。

 再び訪れた養殖場には、卒業式に出席中のえび屋−Mさんは残念ながらお見えではなかったけれど、そのかわりカトウさんがえびを渡してくださった。

 ん?やけに多くないですか??
 我々が買った分ってこんなに多かったでしたっけ??

 「いえ、それ以上にあります(笑)」

 前日水槽内撮影に使ったエビちゃんたちを、全部箱に詰めてくださったというのである。
 ぜ………全部って…………めちゃんこ多い!!

 あらためまして、えび屋−Mさん、ありがとうございます。

 カトウさんや、前夜のヒーロー・エーユーさんたちにお礼とお別れの挨拶をし、我々はさらに北を目指した。
 養殖場は、幹線道路から一本入ったところだから、もと来た道をいったん戻り、再び幹線道路を進めばいい。

 ………はずだったんだけど、あれ?道が違う??

 気づいた時には遅かった。
 すでに元来た道ではなくなっている。

 でも人生、何が幸いするかわからない。
 こうして道を間違えたおかげで、卒業式を終えて急ぎ養殖場へ駆けつけつつあったえび屋−Mさんと、路上で再会できたのだ。

 互いに車に乗ったまま、ドア越しの挨拶。
 他に車など通るはずのない田舎道ならではの、ドライブスルー・グッバイなのだった。