23・新婦の名言

 披露宴は午後4時からで、6時30分終了の予定だった。

 そしてリーダーが手配してくださっている2次会は、新橋で7時30分から。

 銀座から新橋まではさほどの距離もないし、1時間もあれば部屋でゆっくり着替えてからでも充分に間に合う……

 ……と安心していたら、なんと披露宴が終了したのは7時過ぎ!!

 あれ??いつの間に???

 これはどう考えても間に合わないから遅刻をあらかじめリーダーに詫びておきつつ、普段着……といっても島じゃ普段着ないけど……に着替えてから一路新橋へ。

 前日に通りかかった際にリーダーから教えてもらっていたので、確信を持って歩いてきたはずなのにやや迷いつつも、なんとか到着したのは……

 BOX!!

 多くのダイバーにその店ありと知られている店である。
 我々にとっては、あまりにダイバーダイバーしていて敷居が高いために、こういう機会でもないとなかなか入るチャンスがない店でもある。

 そんなBOXを、本日は2次会のパーティ会場として貸切!!

 遅刻して入ってみると、もちろん一画には隊長の職場の友人さんたちがいらっしゃったものの、ズラリと揃ったお馴染みの顔・顔・顔。

 幹事リーダーはもちろんのこと、
 北海道チームのみなさんと、H田さんご夫妻がいる。
 T出さんご家族がいる。
 イカママさんも、アネモネフィッシュさんもゴッドハンドO野さんもいる。
 そして、ウロコムシTバック武田さんも!!

 あのぉ、我々沖縄から上京してきたばかりで、ひたすら旅情を味わいたいんですけど………ここって水納島ですか??

 そうこうするうちに、本日の主賓・新郎新婦が登場!!

 すると隊長がやってくるなり、

 「隊長じゃないじゃんッ!!」

 久しぶりに隊長と再会したH田パパさんが、いきなりの暴走モードで断言していた。
 普段島で酔っ払っている姿しかご覧になっていないから、今宵のように理性に身を固めてピシッと決めている隊長が別人に見えるらしい。

 たしかに別人に見えるけど……。

 一方、隊長オクサマとは横浜で食事をするほどに知り合いではあっても、隊長とは面識がなかったT出さんご夫妻は、口を揃えて静かにつぶやいた。

 「カッコイイじゃん!!」

 そうなのだ。
 真の姿(?)をご存知ない方にとっては、隊長はカッコイイのである。
 そして

 「やさしそう……」

 という声も。
 たしかにそれはそれで隊長のシンジツの姿である。
 奥の席でそうつぶやくよりも、どうせだったらH田パパさんよりも大きな声で叫んであげたほうがよかったかも……。

 そんなこんなで、主賓が到着したところで乾杯!!

 ここBOXでも、披露宴で上映されたお2人のプロフィール映像が、大きなテレビ画面で上映された。

 そして新郎新婦のご挨拶などを頂戴しつつ、各テーブルをまわってくれるお2人を、テーブルごとに祝う……

 ……はずなのに、新婦に注がせるオタマサ!!
 そして、「僕も注いでほしいなぁ…」という目で見守る隊長。

 ともかく本日はおめでとうございます!

 初対面になる隊長とT出さんファミリー。
 ちなみに、新婦隊長オクサマは、水納島にご滞在中は島がエーゲ海に浮かんでいるかのごときエレガントな装いで過ごされている、ということはすでに紹介したけれど、なんとなんと、そもそもそのきっかけは、写真右端で後頭部だけが写っているT出さんオクサマから、

 「妙齢の女性なんだから、もっとちゃんとした格好してなきゃだめよぉ!!」

 と強く勧められたからだという。
 そう言われてみると、それ以前の隊長オクサマは、平気で阪神タイガースのTシャツ姿でお過ごしになっておられたっけ……。

 水納島=エーゲ海の小島伝説は、元祖エレガントなT出さんオクサマのおかげだったのである。<ちなみにT出さんオクサマは、クロワッサンCカード講習第1号♪

 えー、ちなみにここだけの話、このT出さんご夫妻も、厳密に言うと初めてではないのだけれど、水納島で本当の意味で「出会った」ことがきっかけで夫婦になられたカップルである。

 そのあたりのことに興味津々のT出さんの娘なっちゃんではあるけれど、小学生にはまだ早い。ドーナツでも食べていなさい。

 …って、これはT出さんたち自身がもってきてくださった、クリスピードーナツ。
 なんでも近頃人気のドーナツなのだとか。
 もちろん田舎ものの我々はその名すら知らなかった。

 一方、奥の席でなにやらセッセと作業をしている姿が。

 アネモネフィッシュさんが、持参されたイチゴを小皿に分けておられたのだった。

 ここBOXは本来土曜日はお休みで、だからこその貸切なんだけど、お休みだから厨房スタッフがおらず、お酒は用意できても肴は乾きモノオンリーになるため、持ち込みOKということになっていたのだ。

 なのでメインとなるオードブルやお寿司などのほか、こうして持参してくださっている方もいらっしゃるわけである。

 そうこうするうちに、BOXでの2次会はお開きに。
 最後は店の前で、みんなで記念写真。

 これは僕が撮ったものだけど、いろんなヒトのカメラを手にして、集合写真を撮り続けてくださっていたのは、ほかでもないBOXのママさんだ。

 本来お休みの日にお騒がせいたしました!!

 この日の様子が、BOXさんのフェイスブック載っているということを、後日O野さんのブログ経由で知った。
 かなり酔っ払っているワタシが写っているんですけど……いつの間に撮ってもらいましたっけ??

 2次会のお開きは11時前だった。
 小学生は帰んなきゃという時間だけど、オトナにはまだちょっぴり時間がある。
 というわけで、新橋ツアーリーダーであるリーダーT沢さん引率のもと、やってきました3次会。


撮影:店の方

 手前の2人、相当酔っ払ってるなぁ……って、一人はオレか。

 こんな状態なので、ここがいったいどこにあるなんという店なのかまったくわからない。写真まで撮ってもらったのに、お店の方、すみません。

 そうこうしていると、あの方がついに登場!!

 ご存知、巨匠コスゲさん!!

 ……それにしてもコスゲさん、その格好はなんですか??

 「いや、さっきまでバリ島のイベントに出てましてね…」

 って、その格好で電車乗ってきたんですかッ!?

 「もちろんです!!」

 何がもちろんなのかわからないけど、ともかくコスゲさんも到着されたところで、再び乾杯!!


撮影:店の方

 あ……あのぉ………リーダー、けっこう来てませんか??

 この5秒後には……


撮影:店の方

 ああ、リーダーが壊れていく……。

 リーダーがここまで行っているくらいだと、隊長はさらに大変なことに???

 と思いきや。


撮影:O野さん

 隊長、ものすごく紳士じゃないですか!!
 ウロコムシ武田さん、これだったら隊長と「鱗」でしっぽり飲めますぜ。

 前夜とはまったく好対照なごっくん隊。
 それもこれも、隊長の隣に寄り添う隊長オクサマのおかげに違いない。

 そんな隊長オクサマに、誰もが訊きたかったけれどまだ誰もちゃんと伺っていなかった質問を、駆けつけ一杯的勢いでコスゲさんが素朴に訊いた。

 「で、なんで隊長と結婚しようと思ったんですか??」

 コスゲさんの頭によぎる隊長といえば、飲んでは撃沈している姿ばかり。
 隊長オクサマといえば、いつも冷静沈着、いい意味でクールな自己分析に基づいた理性的な行動(それにはもちろん、撮影中の巨匠コスゲさんの頭を指示棒で叩く、というものも含まれる)をする方として知られている人でもある。

 この宴席で詳細が明らかになったお2人の出会いの顛末でも、隊長オクサマは出会いの頃から隊長の撃沈の様相を深くご存知であることを我々はすでに知っていた。
 その彼女がなぜ??
 コスゲさんでなくとも、非常に素朴な疑問である。

 そんなストレート1本勝負の質問に対して、酔っ払いだらけのこの場でちゃんと答えるのも大人げないと思われたのだろう、隊長オクサマはなにげにうやむやにあしらいつつ、いつしか違う話題になっていた。

 しかしそこはそれ、一筋縄では行かないコスゲさん。
 誰もが忘れていた頃に、再び、

 「で、なんでなんですか??」

 そこへ、いい感じで酔っ払っているオタマサまでが、

 「聞きた〜いッ!!」

 そこまで言われれば。
 問われて語るもおこがましいが、知らざぁ言って聞かせやしょう!ということで、隊長オクサマがついに答えてくれた。

 「これから先の人生を考えて、この人がいないのは寂しいな…と思ったからです」

 今後我々の記憶に長く留まることになるであろう名言である。
 こんな大切な言葉を、酔っ払いに語っていただいて良かったんだろうかってなほどに。

 しかし酔っ払いたちはちゃんと聞いていた。
 さきほどまでそれぞれでワイワイガヤガヤやっていたはずなのに、この言葉を耳にした数十秒間ほど、我と我が身を振り返ってややボーゼンとする一同。

 (僕は土曜日の夜遅いこんな時間に、妻を一人家に残して、こんな格好をしていったい何をしているんだろう………)

 そう思われたのかどうか、その後しばらくして、いつの間にやら普段着に着替えてこられたコスゲさんなのだった。

 隊長は果報者であるということをみんな確信した。
 いい話を耳にした後は、酒が一段と美味しい。

 そういえば、この店に入る際には、終電時間も考慮して「30分ほど行きますか!」とリーダーは言っていたはずだったのに、気がつけば3時前。

 えー!?3時前??

 午後3時半頃からウェイティングルームで飲み始めていたわけだから、途中多少空いたとはいえほぼ12時間飲んでることになるじゃないか……。

 というか、こんな時間まで新郎新婦を引っ張っていて良かったんでしょうか。

 ……ということに一同ようやく気づき、2次会に輪をかけて島で飲んでいるような雰囲気の3次会は、ついにお開きとなったのだった。

 タクシーで帰る新郎新婦を見送る、午前3時の新橋。

 遅くまでお付き合いいただき、ありがとうございました!!

 我々も同じホテルとはいえ同じタクシーに乗って帰るわけにはいかないから、未明の銀座通りをのんびり歩きながら帰路についた。

 さすがにこの時間になると、和光ビルも時計を除くすべての照明が消えている。

 これはこれで、ある意味レアなシーンかも……。

 そしてホテルの部屋に戻り、フーッと息をついてからハタと気がついた。

 他の皆さんはどうしたんだろう??

 我々はホテルという帰る場所があったけど、電車が動いていないこの時間、どうやって過ごしているんだろうか。
 というか、始発が動き出すまで我々もお付き合いすべきだったんじゃ???

 まいっか♪

 その頃、残されたみなさんは……


撮影:O野さん

 もう一軒居酒屋に立ち寄った後、始発駅を目指して歩いておられたのだった。
 おお、まさにこのシーンにこそ、あの歌がふさわしい。

 〜♪ Bad Bad Whisky……Bad Bad Whisky……

 みなさん、また島で飲みましょう!!