1・プロローグ

 先年、築地周辺での鮮魚三昧で美味しいお魚をいただくシアワセを味わった我々は、いっそのこと産地に出向いて味わい尽くしたいと願うようになった。

 で、そのあとまず実現したのが2015年2月の金沢旅行。

 念願かなって金沢の旬を味わいつくし、固く再訪を誓ったものである。

 現地でいただく獲れ獲れのオイシイモノに味をしめ、引き続き翌シーズンオフも、同じ動機で異なる場所を訪ねてみようと思案した。

 旬の地のモノを味わえる場所といえば日本にはゴマンとある。
 けれど、首都圏などの都会から弾丸ツアーで一晩にかける旅行ならともかく、年がら年中旅に出られるわけじゃなし、美味しいモノを食べることができ、なおかつ滞在して楽しそうなところとなると、どこがいいだろう……

 そうだ、五島列島へ行こう!!

 実はクロワッサンの古いゲストに五島列島は福江島出身の方がいらっしゃって、その方に故郷のお話を伺って以来、五島列島はずっと気になる土地であり続けていた。

 ベクトルは決まったので、まずお世話になったのがこれ。

 丸ごと一冊五島列島というガイドブックは現在この本しかないという、地球の歩き方JAPAN「五島列島」。

 那覇のジュンク堂で買い求め、さっそく紐解いてみると、それまで茫洋とした存在でしかなかった五島が、少しずつ少しずつその実体を明らかにし始める。

 五島列島といえば、海の幸。
 しかし古くは遣唐使に由来するという五島うどんもまた、日本三大うどんのひとつとしてその名が轟いているという。

 かつて讃岐うどんを食べるため、本場讃岐の地でほうぼう歩き回りながら名店巡礼をしたことがある我々が、日本三大うどんのひとつ(五大とも六大とも)いわれる五島うどんをスルーできるはずはなかった。

 五島うどんも食べまくりたい!

 …そんな野望を抱いたのは、2015年秋のことだった。 

 古事記の時代から我が国にその名が通っているというのに、こと現地情報となるとかなり少ないこともあってか、2015年4月に刊行されたこの本は、その年の5月には早くも第2刷が出ている。

 一方ネット情報も、これまで我々が訪れた他の地に比べれば、極端にといっていいほどに少ない。
 教会めぐりや海水浴の話は多いのに対し、我々にとって肝心要の「飲み屋情報」となると、無きに等しいほどなので驚いた。

 苦労をしつつも少しずつ情報を得て旅行計画を練り、あとは予約するだけという状態になっていたのが一昨年、2015年のシーズンも終わりかけの頃。

 …という段になって、オタマサの病が発覚してしまったのだった。

 当然ながら、旅行になど行っている場合ではなくなってしまった。

 行くことを前提に盛り上がっていた五島列島熱も、急速にトーンダウン。
 やがて翌年のシーズンに入り、忙しなく仕事をしている間に、あれこれ調べた五島情報はすっかり過去のものに。
 遥かな五島列島は、再び茫洋たる霞の向こうに去ってしまった。

 そしてまた月日は流れ、2016年のシーズンも最終盤に。

 父の他界もあって大阪へ行く機会が多く、またそれとは別に大阪と埼玉、ついでに鳥羽にまで行く帰省も予定していたけれど、そういうこととは別に、れっきとした旅行をしてみたい。

 どうせ行くんだったら……

 やっぱり、五島列島へ行こう!!

 五島うどんを食べ尽くし、旬の海幸が待ち受ける魅惑的な店で毎晩飲み明かすのだ!!

 というわけで、2度目のようで初めての、2年越しの五島列島福江島散歩&ドライブ日記の始まり始まり〜〜〜。