15・アンパル上陸作戦

 「ヘゴでエゴ」作戦の無事を寿ぎつつ、Yさん邸に戻った我々を待っていたのは、お待ちかねリゾートランチタイム!!

 Yさんのご実家方面から届いた辛子明太子と、Yさんご自身がゲットしたアオリイカのイカそうめんを混ぜ混ぜした、明太子パスタスペシャル!!

 これがまた完璧なアルデンテ。
 美味しいッ!!
 これはもちろんビールでしょう。

 というわけで、またしても昼間から飲んでしまいました……。

 そんなスペシャルランチを楽しんでいたときのこと。
 ふと窓を見やると、見慣れぬ虫が。

 「あ、マドボタルだよ!!」


庭の椰子の木をバックに蛍……

 おお、これがウワサのオオシママドボタル!!
 おーい、マサカッちゃあ〜ん、家にいただけで見られたよ……。

 やたらと大きなそのサイズもさることながら、昼間っからホタルがこんなに活発でいいの?ってくらいに動き回っていた。

 ホタルは動き回っているのに、僕はお昼寝。
 沢登りという適度な運動とビールですっかりいいこんころもちになって、さらにいっそう開拓が進んだ実り溢れる畑を拝見させていただいた後、至福の昼寝に突入してしまった。
 一方うちの奥さんは、30分ほど近所を散歩してきたそうだ。

 そして。
 エゴツアー第2作戦が始まった。
 目指すは名蔵アンパル。
 石垣島でも有数の広大なマングローブ林と干潟で、2005年にはラムサール条約登録地にもなった場所だ。

 いわば、自然環境保護の聖域でもある。
 そんな聖域で我々が目指すものとは。

 ともかく駐車場で車から出てみると、さすが聖域、手の込んだ案内板が掲示されていた。
 その中で最も気になったのがこれ。

 そう言われて引き抜かないわけにはいかない。
 なので、干潟に入ってから、泥に突き刺さっている落ち葉を見つけては、何度も何度もそっとそっと引き抜いてみた。
 何が出てくるんだろう??
 どんな奇怪な生き物が飛び出てくるんだろう??

 ワクワクしながら引き抜くのだが、抜いても抜いても葉っぱだけ。

 結局そのナゾはわからないままだった。
 翌日、エコツアーのプロ、ふくみみ・おーほりに尋ねてみたところ、

 「食痕が残ってたりするんですよ」

 へ……食べ跡??
 デトライタス食の生き物たち、貝やゴカイやカニなどがこの落ち葉を利用しているそうで、落ち葉を引きずり込んでは泥の中で食べているのだとか。運が良ければ食べている最中に出会えるものの、たいていは食べ跡が確認できるだけなのだとか。
 食べ跡かぁ。
 期待値が高すぎて、まったく気がつかなかった我々なのだった。

 しかし、まさかエゴツアーの目的が落ち葉であるはずはなし。
 ヒサコ隊長の下、隊員たちは干潟を進む。

 ウワサどおり広大だ。
 当然ながら、お借りしている長靴はここでも大活躍。
 おかげでズブズブの泥でも気兼ねなく進める。
 で、この干潟でいったい何を探しているのかというと……
 これだ。

 シジミのオバケ、シレナシジミ。
 以前ヒサコさんが近所の方々と採りに来たらドドンと採れたそうで、その際食べてみたところ、どうにもこうにも泥臭くて食べられたものじゃなかったという。
 でも一緒に採りに行った方々は、口を揃えて「美味しい美味しい」とおっしゃるそうな。

 とても美味しいのか、かなり泥臭いのか。
 真実はどちらであれ、どちらであっても話のタネにはなる。
 というわけで、この貝ゲット作戦なのである。

 すでに潮が引ききっている干潟には、随所に貝探しをした跡が残っていた。もうライバルに先を越されているのだろうか?
 ところが、Yさんがなにげに足で干潟をモゾモゾすると、

 「あ、いた!」

 「お、いた!」

 次々に発見。
 我々も最後のほうでようやく見つけることができ、ヒサコ隊長ときたら泥だらけになりながら頑張ってくださっていたので、なんだかんだでけっこうたくさん採れてしまった。

 とはいえ、闇雲に採ってしまって「不味かった」では大変なので、とりあえずどんな味であれ我々二人が責任を持って食べきることができる量をそこから厳選。
 結果、6匹がこの作戦の戦果と相成った。

 こうしてアンパル上陸作戦は成功裡に幕を閉じたのであった。
 帰り際に、潮干狩りをしている親子連れの姿があった。
 バケツを覗かせていただくと、アラスジケマンガイが大切そうに収納されていた。
 もちろんこの貝も食用だ。

 地元の人たちの生活=食卓と密接に結びついてこそ「身近な自然」だ。
 そういう意味ではここアンパルは、ラムサール条約登録であれなんであれ、この地の多くの人々にとって大切な自然であることは間違いない。

 どうも日本の環境行政ってのは、ラムサール条約とか世界遺産とか、人間、特に西洋文化が生み出した「箔」がついていないと、その環境が大切なものと思ってくれないフシがある。
 その地域で暮らす人々が大切に思っているというだけの理由で、なぜに保護策を打ち出せないのだろうか。

 デューク・フリードなら、このマングローブの赤ちゃん一本のためだけでも、きっと命を懸けるに違いない。

 その帰り道。
 後部座席から窓外を眺めていたら、一瞬視界の片隅にあるものが見えた。
 大きな体、緑色の頭部…………

 クジャクだ!!

 わき道のど真ん中で、大きな鳥が散歩していたのだ。
 慌てず急いでYさんに車をバックしてもらうと………

 いた!!

 一瞬ながらみんなが目にしたので、追い風参考記録にならずにすんだ。
 残念ながらたっぷりゆっくり羽を広げる姿を眺めるまでには至らなかったとはいえ、昨日のフンに比べれば格段の進歩だ。
 というか。
 マサカッちゃあ〜〜〜ん、クジャクも見られたよぉ!

 クジャクの次は…

 アヒルやニワトリが!!
 エゴツアー第3弾は、アヒル強奪作戦!!

 ……というわけではない。
 ちなみにここ「なぎや」さんでは、アヒル=バリケンの販売をしているらしい。

 アヒルって高価でしょ?
 それにしても、「済」というのはなんとなく想像できるけれど、「未」というのはいったいどういう状態で発送されるのか。
 非常に興味深い。
 どなたか、勇気を出して注文してみてください。

 そして。
 Yさんの家まであと20秒というあたりのことだった。
 目の前を、鳥がタタタタタタ………ピューッっと横切って行った。
 シロハラクイナだ。

 マサカッちゃあ〜〜〜ん…………。

 彼が石垣に残していった未練を、この日すべてクリアした我々なのだった。

 さあこのあとは、いよいよ本日の戦果を実食!!