無謀にも焼肉に挑んだ我々だったとはいえ、さすがに夜遅くまで飲み食いするわけにはいかなかったので、程よいところでこの夜はお開きになった。

　そして、一夜明け………ない。
　日本の西の端の石垣島では、朝７時でもなお真っ暗なのだ。
　お隣の台湾は１時間の時差があるため、同じ季節でも石垣島と比べると台湾の朝７時のほうが明るい、ということになってしまうのである。

　ともかく朝になり、目覚めていきなり気がついた。

　胃が…………もたれている。

　当たり前か……。

　マラソン前夜と、久しぶりにいろんな人たちに会ったことで、すっかり遠足前の小学生になってしまって寝られなくなった昨年とは違い、今年はうちの奥さんもしっかり睡眠をとることができたようだ。

　大会の案内では、朝８時半にスタート地点に集合ということになっている。
　昨年は素直にキチンとその時刻までに到着し、準備万端整えていたものの、待ち時間がけっこう長く、会場までの道のりを歩いてせっかく準備運動に充てたのに、体がすっかり冷えてしまった。

　なので今回は、スタート少し前に到着するくらいの予定にし、朝食のビュッフェもゆっくり目に。
　でも、胃もたれしているうえに遅めの朝食って、走る体にはよろしくないんじゃなかろうか？？

　まぁいっか、ハーフだし。
　…でも、うちの奥さんも同じようにしてるんですけど。

　昨年に比べるとかなりリラックスした状態で準備を済ませ、そろそろ会場へ向かうことにした。
　隊長とは我々のホテル前で待ち合わせていたところ、時間どおりにテクテクといらっしゃった。

　隊長、快適な朝でしたか？？

　「…やや腹を下してます」

　やはり焼肉はヘビーすぎたか……。

　「なんか、巨人の星を思い出しますねぇ」

　え？

　「試合前日に、伴宙太のパパが息子のチームメートにすごいご馳走をふるまったんですけど、いいところのオボッチャマの伴宙太と、貧乏で鍛えぬかれた星飛雄馬以外の選手たちが、いきなり食べなれないイイモノを食べてしまったせいで、全員腹壊しちゃって、結局星飛雄馬と伴宙太の二人だけで勝っちゃった…みたいな話、ありましたよね？？」

　すみません、知りませんでした。
　「巨人の星」って、そんなコメディだったんですか？？
　しかしたしかに、食べなれないジョートー肉を前夜たらふく食べて迎えた今朝の我々の胃腸状況は、青雲高校野球部員たちに似ているかもしれない……。

　そんな話をしながら、テクテク歩いて会場を目指す。
　昨年は３０分くらいで着いたような記憶だったのだが、実際はもう少し遠かったようで、４０分くらいかかってスタート地点に到着。
　すでに式典が始まっていたスタート地点には、大勢のランナーが犇いていた。
　いやでも盛り上がる緊張感。

　会場には、この日ボーリング大会の予定が入っている島Ｐ夫妻も来てくれていたので（待てど暮らせど現れない我々にヤキモキしていたらしい）、やや緊張気味の隊長ともども、使用前の写真を。

　９時前なのに、まるで早朝のようなこの影の長さ。
　……って、そうなのだ。この日はなんと、奇跡の晴天！！

　旅行出発前からずっと気になっていた当日の天気予報、週間天気予報ではいまいち冴えない模様で、あろうことか傘マークまで出ていたこともあった。

　それが曇り予報になって安堵していたところへ、この青空！！

　太陽って暖かい………。

　でも、晴れたら晴れたで、特にフルマラソンは大変だ。昨年、あわや頭部がオーバーヒートしかけたことからも明らかなように、暑すぎてもダメなのである。
　隊長はこのマラソン大会に備え、いろんなシチュエーションでの練習も行っていたという。
　寝不足気味バージョン。
　二日酔いバージョン。
　寒いときバージョン。
　が、暑いときを想定した練習は、冬の本土でできるはずはなかった。

　そんなこんなしているうちに、いよいよスタートの時刻が。
　１０キロコースのスタートは５分早いけど、ハーフとフルは同時にスタートする（６キロ地点くらいまでのコースも同じ）。