10・愛のバナナ

 なんとか「どんどこ応援団」の場所まではたどり着いた。
 あとはえび屋−
Mさんがバナナを持って待っていてくれるという27.5キロ地点にたどり着きさえすれば、たとえゴールならずとも一応の面目は保てる。
 まずは目指せ
27.5キロ地点!!

 しかし序盤さんざん無駄口をたたいていた僕も、いつしか言葉数が減っていた。
 うーん……さすがにしんどい。

 うちの奥さんを見ると、淡々と走り続けている。
 ………このままノンストップで走りきるつもりなのだろうか。
 自分の足の疲労度を鑑みると、このままノンストップで走り続けるのは、どうも無理っぽいんだけどなぁ……。

 と非常に困っているところへ、降って湧いたようにホッとする一言がうちの奥さんから発せられた。

 「24キロの表示のところで、一端止まって足をマッサージしていい?」

 え?止まってくれるの??
 これにはかなり救われた……。

 彼女が小休止して足をマッサージしている間、僕はそのまま歩いて前に進むことにしたのだけれど、「走」から「歩」に変えた途端、腰から下が自分の体ではなくなった。
 完全に機械的に単調運動を繰り返していたせいで、瞬時に歩くモードに切り替わらないのだ。
 気を許せばそのままくず折れてしまいそうだったので、歩くことすらママならない。

 どうにか歩き方を思い出したところへ、マッサージを終えたうちの奥さんが追いついてきた。
 もっと歩いていたかったところ、なんとか気合で再び走り始める。
 この、いったん休憩したあとに走り始めるときの膝の痛いこと痛いこと。

 脚も滅法だるい。
 うちの奥さんによると、少しモミモミするだけで随分違うという。
 なので、
25キロ地点の給水所でエネルギー補給をしつつ、僕も自分の脚をマッサージしてやることにした。

 おおっ!!
 ふくらはぎパンパン!!
 力を入れているわけでもないのに、ガチンゴチン。こんなに筋肉が固くなってしまっていていいのだろうか。

 ストレッチをし、モミモミし、なんとか強張った筋肉を揉み解して再び走り始めた。

 なるほど………たしかに少しは楽になる。
 でも、その効果はすぐに切れる(涙)。

 ともかくもうすぐ27.5キロ地点だ。
 なにげに急な登り坂の果てにあった
27.5キロ地点の給水所。さて、えび屋−Mさんの姿は??

 あれ??
 いない??

 あまりに遅いのでもう我々は棄権したかと思い、帰っちゃったのだろうか??

 このあたりからもう筋肉が乳酸発酵してヨーグルトになりかけていた。給水所ごとに脚をモミモミしなければ、脚を前に出せない……。
 なので27.5キロ地点の給水所でもまたモミモミしたあと、今度は下り坂を進み続けると………

 あっ!!
 あのトトロのような、ムーミンのような、ハンプティ・ダンプティのようなシルエットは!?

 えび屋−Mさんだ!!

 約束どおり、バナナを手渡してくださるえび屋−Mさん。
 それも、ご丁寧にも皮が剥かれた状態で。
 皮が剥かれた状態のバナナが入ったビニール袋、というのは、冷静に見るときっとなかなか強烈な姿だったのだろうけれど、9時からお昼抜き状態で走っている我々には、貴重な栄養源以外のナニモノでもなかった。
 ビニール袋にはバナナのほかに、ロイズ石垣の黒糖チョコまで。

 これなら、たとえ山で遭難しても3日は生きられる!!
 お忙しい中、本当にありがとうございます!!

 この28キロ地点通過時の様子の写真を当サイト掲示板にて実況中継つきで紹介して下ったのがえび屋−Mさんで、その写真がこれ。


撮影:えび屋−Mさん

 ほんとにもう、このときはホントは両手を挙げる力なんてなかったはずなんだけど、やっぱ沿道の声ってのは力になるんですなぁ…。

 この写真を実況でご覧になった方々は、元気そうだから完走できそうですね、などとおっしゃってくださっていたものの、内実はとんでもない。
 元気のげの字が風前の灯だったのだから。

 実際の様子は、同じくえび屋−Mさんが撮ってくださったこっちの写真のほうに表れている。


撮影:えび屋−Mさん

 どうです、この寂しげな背中。
 エネルギーは尽きようとしていた…。

 ともかくこうして、ようやく28キロ地点を通過。

 そしてフルマラソンは、いよいよこれからが本番だ!!

 急げヤマトよ、イスカンダルへ!!
 人類は君の還りを、君の還りだけを待っている!!

 地球人類滅亡まで……………あと2時間16分!!