21・エコツアーふくみみ

 マラソン当日、沿道から我々に温かい声援を送ってくれたどんどこ応援団主要構成員であるふくみみ一家。
 これまであえて詳しい説明をしてこなかった「ふくみみ」。いったいふくみみって何??

 石垣島でエコツアーをしている彼らのその屋号が、「ふくみみ」というのである。

 エコツアーといえば、普通はグリーンだとかマリンだとかネイチャーだとか、そういったありきたりな名前がつきそうなものなのに、いったいふくみみってなんね??と多くの方が思うところであろう。
 少なくとも、それだけ聞いて業種がわかる人はまずいない。

 実は、彼らの長男ユイマル(もちろんゆいまーるに由来)の耳が「福耳」であることから命名された屋号なのである。
 ……って、普通のエコツアー業者はそういう名前にはしないよなぁ。
 逆に考えると、そういうあたりに、彼らの人となりとエコツアーのスタンスが表れているともいえる。

 彼らは我々の大学時代の一年後輩にあたり、卒業後はそれぞれまっとうな仕事についていた(いえ、エコツアーがまっとうじゃないという意味ではなく…)。
 しかも、ふくみみ夫人のりだーは、サンシャイン国際水族館で働いていたのである。
 そう、職場でもうちの奥さんの後輩だったのだ。
 しかものりだーは、先に触れたサンシャイン国際水族館の一大リニューアルの際には、Yさんの下で大活躍したという。<あくまでも本人談。

 そのリニューアル準備の際に東京から足繁く通った石垣島での経験が現在の仕事に結びついているのだから、やっぱり人生って面白い。<環礁沿いの住人さんも深く関わっている。

 一方、海洋学科で僕と同じ地質系コースだったふくみみ・おーほりは、卒業後は全国各地の地質という地質を調査しまくるコンサルタント会社で日々忙しく勤務していたのだけれど、長男誕生を機に人生と生活を見つめ直し、そしてこの道に入った……
 ……と本人は言うのだが、おそらく間違いないであろう当サイト推測によれば、のりだーの口車にまんまと乗せられたと思われる。<実はうちがそうなだけなんだけど…。

 それはともかく、すでに1児をもうけていたふくみみ夫婦は、東京での(少なくとも経済的には)安定した暮らしを捨て、石垣島にてエコツアーを営む道を選んだ。

 石垣島にも頼れる人がいたとはいえ、やはり最初の数年は大変だろうなぁ、売り上げに貢献しなきゃなぁ…

 と思っているうちに月日は流れ…………
 ……早10年。
 無沙汰もキワマレリというところだ。申し訳ない……。

 今でこそ猫も杓子もエコエコ言っている世の中だけど、彼らが仕事を始めた頃なんて、それも石垣島あたりだとエコツアーの仕事なんてのは、「ナントカ真理研究所」などと同じくらい胡散臭く思われたに違いない。
 ことに学校教育方面だとか行政相手になれば、当初は歯牙にもかけられなかったことだろう。

 しかし石の上にも三年、石垣にも十年。
 彼らふくみみが地道に取り組み続けた環境教育にかける熱意は、石垣島におけるエコツアーという業態の市民権を確立していくとともに、ついには誰もが第一人者と認めるほどの存在へと、ふくみみを高らしめたのであった。
 今や関係各方面から頼られるエコツアーふくみみ。

 うーむ……どこかのダイビングサービスとは大違いだ。

 まぁ、それが売り上げに直接ドドンと結びつかないあたりはしょうがない。でも彼らの真摯な取り組みは、きっとさらなる大輪の花を咲かせることだろう。

 そんな彼らのエコツアーとは、肩肘張ったものではまったくないようだ。いわく、

 ふくみみの石垣島自然体験ツア-は、沖縄・石垣島の自然を楽しむのんびり型のエコツアーです。
 小さなお子さま連れのご家族、体力に自信のない方、お仕事にお疲れのお父さん、育児にお悩み(?)のお母さん。
 『ふくみみ』は、そんなあなたの強い味方。
 サンゴ礁でシュノーケリング、マングローブをトレッキング、亜熱帯のジャングル探検、白い砂浜で宝物探し。
 今までの観光では出会えなかった石垣島を御案内いたします。
          (エコツアーふくみみのサイトより)

 のんびりなエコツアーとはどういうものなのか。
 さあ出発しましょう!と言ってから、3時間くらい経ってやっと出発するツアー??

 …かもしれないけど、僕なりに理解しているところで、わかりやすくダイビングに翻訳して言うなら、

 石垣に来たなら何が何でもマンタ観なきゃ!!マンタマンタマンタ!

 …ではなく、

 ほら、マンタ以外にも海には楽しい生き物がたくさんいるんですよ、このカンザシヤドカリも可愛いでしょ?

 ということなのではなかろうか。
 それなら、業種は違えども相通ずるものがある。クロワッサンのゲストの皆さんたちだって、きっと楽しめるに違いない。
 子育て中でダイビングはちょっと…というそこのお母さん、是非一度ふくみみをご利用ください。

 そんなのんびりエコツアーふくみみの名ガイドおーほりが、我々を案内してくれるという。
 目的地は野底マーペー。
 たとえ筋肉痛を抱えた身であろうとも、彼らが案内してくれるのならきっと……………大丈夫に違いない。