57・ヴァチカンへ行こう!

 ローマの街を走っている自分に酔いしれつつ(<バカ)、心地良いジョギングもどきを終えてホテルに戻ると、すでに7時を過ぎていた。
 うちの奥さんたちは7時には朝食に行く、と言っていたからちょっと遅刻だ。

 するとフロントマンが、ナニゴトか僕に話しかけてきた。
 フロントで天気の按配を尋ねたときに、カウンター越しにパソコン画面で天気予報サイトを見せてくれながらその日の天気を教えてくれたフロントマンだ。

 なんだろう、よく聞き取れないんだけど。
 遅刻しているので早く行きたいんだけど、大事な話かもしれないから頑張ってヒアリングしてみたところ……

 「他の二人はすでに部屋にいないけど、チェックアウトして出て行ったわけじゃないから、心配しないでくださいね!」

 ジョークだった……。

 我々の部屋は中二階のような場所になっていて、屋上テラスに行くためのエレベーターに乗るには一度階下に降りてフロントのそばを通ることになる。
 なので、7時を過ぎて一足早く朝食に向かった父ちゃんとうちの奥さんは、すでに部屋にいないことを彼は知っているわけだ。

 それをわざわざ冗談で教えてくれたフロントマン。
 やっぱおしゃべりが好きなんだなぁ、イタリア人って。

 そして再び爽快な屋上テラスでの朝食を済ませたあと、本日の散歩開始!!

 目指せ、ヴァチカン!!

 僕の朝の散歩は、そのルートの下見でもあったのである。
 ああ、なんて健気なワタシ……。

 さっそくハドリアヌスの神殿へ。
 でもなんだか様子が違う……。

 なんかイベントの準備みたい。
 仕事中のスタッフになんなのか訊ねてみたところ、どうやら「フェスタ」であるらしい。
 お祭り?
 はて、なんのお祭り??

 こういう風情よりは、やっぱ朝のたたずまいのほうがよかった。早起きは三文の徳とはよく言ったものだ。

 パンテオンは、まだ開館(?)前ということもあって、広場も賑わってはいなかった。

 早朝はハドリアヌスに思いを馳せたパンテオンだったけど、今回はもちろんこれ。

 この角度。
 ズラリと並ぶタクシーが邪魔ながら、いったいこのアングルは??
 そうです。

 例によって「ローマの休日」ね。
 グレゴリー・ペックが友だちのカメラマンを待つ間、オードリー様とお茶していたカフェ。
 実際はこの場にカフェはなかったそうなんだけど、それは映画にはよくある話。
 タクシーがズラリと並ぶよりは、馬車がポカポカ通り過ぎていくほうがいいなぁ。

 そしてお次はもちろんナヴォーナ広場。
 ナヴォーナ広場といえば、この噴水。


背後の像のポーズを真似ているつもり……

 ルネッサンス期の大御所、ベルニーニ作の四大河の噴水。

 人も少ないナヴォーナ広場を後にし、早朝の下見どおりテヴェレ川に出た。
 河原を歩く。
 さっそく……

 テヴェレ川初タッチ!!
 まぁ、きれいでもなんでもない川なんですけどね…。

 この河原沿いをヴァチカン方面に向けて歩くと見えてくるのが、ご存知サンタンジェロ城。


お城などには目もくれず、カモを見ているオタマサ。

 このサンタンジェロ城、ローマ帝国の衰退とともに帝都の防衛も危うくなってきた3世紀に要塞になり、その後キリスト教社会になって以後も要塞であり続けた。
 そしてヨーロッパを席巻したペスト禍の最中に大天使ミカエルがこの要塞に顕現し、ペストはもうすぐ終わるよん、と告げてくれたそうな。
 以来名前が聖天使城、すなわち
Sant' Angelo城になっている。
 でも、この建造物はそもそも、ハドリアヌスの霊廟なのである。

 またも出ましたハドリアヌス!
 これに形は似ているもののサイズは随分小さなアウグストゥスの霊廟がそれ以前から別の場所にあって、それを模しつつ皇帝にふさわしい立派な霊廟ってことでハドリアヌスが着工。跡を継いだアントニヌス・ピウス帝が竣工している。
 ハドリアヌス帝以降、カラカラ帝までの皇帝がここに葬られているそうな。

 そんな話に他の二人が興味を抱くはずはない。
 ではなぜここに?
 それはもちろん!!


ローマの休日より

 オードリー様とグレゴリー・ペックがダンスパーティ会場に向かうシーンね。

 映画ではこの河原から浮き桟橋みたいなものが設けられていて、そこがダンスパーティ会場になっていた。
 ああいうのは、当時実際にあったのだろうか?それとも映画用のセットなのだろうか??
 いかにもアメリカンなダンスミュージックだったものなぁ…。
 あ、まだイタリアに米軍がいたからなのかな??

 この河原にオードリー様が下りてくる階段、


ローマの休日より

 ここももちろんこのとおり。

 セーフティガードが増えてるあたりがちょっと変わってるけど、ほぼそのまま。

 この階段を上がると……

 サンタンジェロ橋。
 たくさんの天使たちに見守られつつ橋を渡ることになる。

 この橋からの眺めも美しい。

 ちなみに向こうに見える橋の下あたりが、ダンスパーティ会場での乱闘のあとにオードリー様とグレゴリー・ペックが泳ぎ着く場所。

 そして、眺めがいい場所にはやはりこれがあった。

 南京錠♪<覚えてますか?

 橋を渡ってハドリアヌスの霊廟に出ると、そこからはもう表参道だ(?)。
 まっすぐ進むと………

 ヴァチカ〜ン!!