66・花の野広場

 朝食後、この朝に行こうと決めていたところに行ってみた。
 カンポ・デ・フィオーリ広場。
 花の野というカワイイ名前の広場、もちろん今は野原ではないけれど、ここには日曜祝日を除く毎朝、市が立つのだ。
 市すなわちメルカート。
 パレルモでたっぷり味わったその魅力を、ローマでも再び!

 

  

   

 パレルモの市場のように鮮魚だ、精肉だって品揃えではなかったけれど、それでもやっぱり、朝の広場で行き交う人々が買い物をしていく様子は観ていて楽しい。

 色とりどりの野菜のなかには、ついに食べる機会を逸してしまった魅惑の野菜が並んでいた。

 プンタレッレ♪
 これ、秋から冬にかけてが旬の、ローマの伝統野菜。
 すでに季節は春だから、ないものだとばかり思っていたら、まだまだあったのだ。
 にしてもこのチリチリ具合、どんな野菜なんだろう?と思っていたら………

 見た目セロリチックな野菜だった(左下)。

 で、どうやったらあんなカーリーちゃんになるの??

 ある道具にこのプンタレッレをニュイ〜ンと通すと、カーリーちゃんになってスライスされるのだ。
 その道具とは!!

 プンタレッレスライサー!!
 ……って、おじいがそばからやってきて、

 「これで切るんだ、タカクナ〜イ!」

 最後はアヤシイ日本語を使うオジイ。
 ここは実演販売コーナーだったのか???

 といいつつ、実に興味深い調理器具ではあったものの、さすがにプンタレッレを切る機会はなさそうだからあきらめた。

 そのかわり、別の実演コーナー(?)でさらに興味深い実演をムービー撮影で撮らせてくれた人の調理器具を、ついつい血迷って買う気になってしまった。

 すると、また横からさっきのオジイがやってきて、

 「これとそれをセットで10ユーロ。タカクナ〜イ!」

 なぜか「高くない」という日本語だけは知っているらしい。
 さすがローマ。
 でもやっぱりプンタレッレスライサーは使わないからオジイにそういうと、それとはまったく関係なくオジイが僕に問うてきた。

 「10ユーロって、日本語で何て言うのかね??」

 ジューユーロ、と教えてあげると、

 「ジューユーロォ、ジューユーロォ、タカクナ〜イ!」

 さっそく覚えたオジイ。
 そしてその覚えたての日本語を、隣の店舗の若者に自慢するオジイ。

 「おい、日本語で10ユーロってなんていうか知ってるか?」

 すると隣の若者は、

 「ジューユーロ!」

 お、知ってた!!
 それだけではなかった。彼はそのあと

 「イチ、ニィ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ、キュー、ジュー!!」

 1から10まで全部知っていた!!
 おお、さすがローマ。
 自慢できずにガッカリするオジイなのだった。

 そんなこんなで、お土産用にいろいろな食材も買ったんだけど、どうしてもプンタレッレを食べてみたい、とわがままを言う人が。
 オタマサである。
 マサエ農園主催者としては、やはりローマの野菜を味してみたいのだ。

 とはいえ我々はこの日ローマを発つ身。
 買うのは簡単にしても、どうやって食べれるだろう??

 味見をさせてくれるというので、一つまみ食べてみた。

 あ………………美味しいかも。

 100グラム2ユーロか。
 じゃ、200グラム買います!!

 って、それどこで食べるの??

 心配ご無用。
 我々には、パレルモで部屋食したときの調味料があるのだ。

 ……それをローマまで持ってきた父ちゃんスゴイ。<「もったいない」世代。

 というわけで、後刻部屋で、オリーブオイルとバルサミコ酢でプンタレッレサラダ♪

 これがまた、ちゃんとレストランで食べたらさらに美味しかったろうなぁ的素朴で素敵な味。
 見かけはセロリチックながら、強いて例えるならウドのような、瑞々しさに満ちた爽やかな野菜だ。

 これをこっちの食べ方でキチンと勝負してみたかったぜ。

 この広場には雑貨もあって、見た目きれいなガラス製品が並び始めていた(まだ朝早かったから、市場は始まったばかり)。

 ワインの栓もあった。

 ガラス細工の飾りがついて、パッと見高そうなんだけど、これすべて5ユーロって。

 安すぎない??

 てゆーか、同じくガラス工芸の世界に身をおく人を身近に見ている僕からすると、これで600円弱ってのはちょっと安すぎる。
 案外東南アジア製とか??

 これってどこのものですか?と、店のおばあに訪ねてみると、おばあ、ややうろたえつつ、

 「イタリアさぁ、全部イタリアよ!!」

 ……アヤシイ。
 でもまぁ、ここでこのおばあから買えば紛うことなきイタリア土産だ。
 なので、いろいろお話してくれたご恩返しに、自分用のお土産を買った。
 ワインの場合、一度開けると空けるまで飲んでしまうので、栓が活躍するケースはあんまりない。
 すると、なかにいくつかオープナー(コルクスクリュー)を見つけたのでそれにした。

 メイドインどこであれ、このおばあのお店の商品である。

 カンポ・デ・フィオーリにお立ち寄りの際はよろしくね。

 友人方面へのお土産は買い終えたものの、家にいる孫と嫁への土産を買わなきゃ、ってことでまたこの朝からソワソワしていた父ちゃんも、この広場にて使命を果たすことができた。

 我々もまた、パスタやドライトマトなどなど持って帰れそうな魅惑の食品を買い込み、島の人たちへのお土産を選び終えることができた。

 あとはこのお土産を荷物に詰めるだけ……だったのに、最後の最後で衝撃の事実が判明する!!