2・試練の(?)前夜祭

 

 我々の旅行は、いつものように那覇空港から始まる。
 島を出るのは朝イチの連絡船なので、どんなに頑張っても出発は昼前後の便になる。

 となれば、空港でランチというのも毎度のことになるのは必定。

 そして空港でランチといえば、もはやこのところ恒例といっていいキリンビア&スナック。

 しかしこのキリンビア&スナックにも、時代の波が押し寄せているようだ。

 その気配は前回利用した際から漂っていた。
 以前は店名に「スナック」とあるように、客にビールを提供するのが主体で、ビールに合う肴と申し訳程度に食事メニューがあった程度だった。
 それが今や、すっかりランチメニューが幅を利かせているのである。

 すると、生ビールは飲まないくせに食事をする客が来ることになる。

 当然昼時ともなれば混雑する。

 かつては他所がどこも混んでいる昼時でもなお空いているからこそ重宝していたのに、すっかりフツーのランチ営業のお店と化しているのだ。
 周りにはお茶を飲みながらパスタを食べているオトナたちもいる始末……。

 これで生ビールもワヤになっていたら愛想を尽かすところながら、さすがにそこはしっかりしていた。

 おお、これぞまさしくマイスターのワザ♪

 昨オフ2度利用した際には、わざわざキリンのお店で飲んでいる割には大した継ぎ方じゃないよなぁ…という感じだったところ、キリンシティにおけるドイツ伝来3度注ぎとはこのことか!とでもいうほどの泡・泡・泡。

 なんだかんだいいつつ、結局いつものようにソーセージ盛り合わせとサラミ、そしてタコスピザなんぞを肴に、例によって昼から2杯も飲んじまったぜ。

 あ、いかんいかん、節制摂生。

 暴飲暴食はこれが最後だ。
 飛行機ではしっかり睡眠をとって、埼玉に到着したらあくまでも節制&摂生しなければ。

 ……と思っていたのに、埼玉の実家では気がついたら痛飲していた。

 そりゃ2年ぶりに飲む楽しい席で、自重できるはずなどないではないか。

 そんな実家での宴席の話で面白かったのが、義弟が最近はまっているという「テンヤ釣り」。

 もともと子供の頃から釣りが大好きな彼は、長じてからもマッドフィッシャーマンとでもいうべき釣り人になっているのだけれど、近年はもっぱらルアーを使ったバス釣りがメインと聞いていた。

 ところが近頃は、「テンヤ釣り」でタコを釣ることに夢中なのだという。

 ブラックバスに比べ、タコはゲット後の家族のウケがよいのもそのモチベーションに繋がっているようだ。

 ところでその「テンヤ釣り」、実際の道具を見せてもらったものの、今一つイメージが湧かない。こんなものでタコを1匹ずつ釣ることができるものなのだろうか?

 するとなんとも用意のいいことに、釣りの番組で放送されたテンヤ釣りの録画があって、それを見せてもらった。

 するとどうだ、ベテラン釣り師に習って初めてテンヤ釣りに臨んだ芸能人が、あれよあれよという間に何匹も釣り上げているではないか。

 タコを釣りでゲットできるなんて!!

 経験のない芸能人ですらそうなのだから、ベテラン釣り師の義弟の手にかかればタコが大漁になるのは当然のことで、室内の冷凍庫を見せてもらったところ、そこにはまるでリョウセイさんの冷凍庫なみにタコがビッシリ!!

 こんだけあったらタコには困らないね!

 と姪っ子たちに問うてみると

 「タコはもう飽きた!!」

 かなり食べているらしい……。

 残念ながら島で我々が獲っている島ダコ(本名ワモンダコ)とマダコとでは生息環境が異なるので(味も異なる)、同じような仕掛けで同じように釣ることはできないだろう。

 それにしても、タコを一本釣りとはなぁ………。

 そんな話題で盛り上がりながら酒は進み、夜は更けていった。

 翌朝、相当な二日酔い状態でモーロ―としつつ(うちの奥さんはさほどでもなかったよう)義母のお墓参りに行き、お昼はもちろんサイゼリア。

 え?「もちろん」なんですか??

 なんと昨夜のうちに(ワタシが特に)盛り上がって決定していたらしい。

 ウーム……ここでサイゼリア。

 しかし義弟ファミリーにご馳走しようという席で、大のオトナが一人だけソフトドリンクを……なんてわけにいくはずもなく、結局サイゼリアではワインのマグナムボトルを3人で空けてしまう暴挙に出てしまった。

 いやあ、迎え酒ってのは本当に効き目があるんですなぁ。

 なんて言っている場合ではない。
 節制して摂生しなければならないのである。
 ランチでたらふく飲んでしまった以上、あとはもうおとなしく布団にくるまり、明日の出発まで健やかな睡眠を……

  …って、今宵が埼玉滞在のメインイベント、鳥吉デーではないか!!

 昼間は新年会で不在だった父ちゃんが、鳥吉でご馳走してくださるというのだ。

 夕刻6時、一族で鳥吉へ。

 いやあ、鳥吉、焼き鳥が美味しいのはもちろんのこと、相変わらず美味しい肴を作りますなぁ!!

 などと言いつつ、ご馳走していただけるというので遠慮なく飲みまくって食べまくる。
 なんだかこれまでになかったオシャレな爽やか系メニューも増えていて、一味違った次世代バージョン新生鳥吉??的なプチ感動も味わうことができた。

 やっぱ、居心地のいい飲み屋さんでいただくお酒は美味しいですな。

 たしかにこの場はまさに夢心地ではあるけれど。
 ゴキゲンな気分と反比例して、旅行のために培ってきたエネルギーカウンターのメモリが、音を立てて減っていくような気がする……。 

 というわけで。

 この2日間は、体内からアルコールが途切れるチャンスがついに1ミリもないまま過ぎ去っていったのであった……。