3・門司港駅
レトロで町興し、というのは現代日本の随所で観られる流行だ。 今の世の中、無邪気に鉄腕アトムのような未来図を頭に描いているのは、アベソーリだけかもしれない。 門司港といえば、いち早く……かどうかは知らないけれど、レトロ路線で大成功をおさめている地域であることは間違いない。 なにしろこの地域の名称は「門司港レトロ」という。 付近に残っていた建物の建造年に準じているのか、回顧する時代を大正に絞っているおかげで、いささか人工的とはいえ街並みに統一感があって心地いい。 とりわけ門司港駅は、地域のシンボルだ。 大正3年=1914年築(駅の開業は明治24年)の、いわゆる大正モダンな駅舎が7年かけて見事に修復・リフォームされ、創建時の姿になって2019年に堂々復活!
いやあ危ない危ない、1年早く来ていたら工事中。厳島神社と同じ目に遭うところだった……。 昨年訪れた出雲の旧大社駅もまた大正時代築(大正13年)ながら、それとはまったく趣きを異にする洋風建築。 出雲と違って明治の世から海外に開かれた街である門司港とすれば、周辺の建物との調和という意味でもデザインは「これっきゃないでしょ」ということだったのだろう。 もっとも、列車で駅に到着した者は、上の写真のような外観を目にするのは駅を出てからになる。 でも駅構内もレトロワールドだから、列車を降りてすぐにタイムスリップ。
天井から釣り下がっている裸電球チックなLEDが味わい深い。 駅名表示はフツーはホームと平行になっているものなのに、改札が写真奥側一カ所のみだからかそれがレトロなのか、しっかり正面(?)を向いている。
屋根の作りとあいまって、なんだかいい感じ。 改札にたどり着いてから振り返ってみると……
おお、まるでエルキュール・ポワロがオリエント急行に乗るところのよう……(全然違いますが)。 改札はというと……
実際に利用するのは奥側の自動改札機ながら、その横に昔ながらの改札が復元されているあたりがココロニクイ。
ただし、もちろんながらここを通過できるのは係員だけ。 そんな改札を抜けるとすぐに駅舎があるのだけれど、その手前に、キオスク的にファミリーマートが入っている(下の写真の奥側が改札)。
どんなにレトロに調えても、売店が全国区のコンビニになるあたりが現代社会ということか。 ま、100年後には、ファミマも「レトロな風景」になっていたりして。 改札を抜けて駅舎ロビーに。
レトロ調に設えられている切符売り場の一角は、もちろん現役だ。
そしてこのロビーから続く左右の部屋は、かつてはそれぞれ一等・二等待合室と三等待合室になっていたそうなのだけど、前者は現在……
みどりの窓口に。 そして三等待合室は……
スタバになっていた…。 そうそう、レトロといえば、駅構内のお手洗いまでが……
カランまでレトロ。 しかしまぁ、到着した駅をここまで徹底紹介してどうすんだってなところなのに、こんなに舞い上がって写真を残してるってことは、ワタシきっと気に入ったんでしょうね、門司港駅。 ただし素敵な門司港駅にも、弱点はある。 駅前には噴水広場があって、広々とした風景の中で駅舎を眺めることができるのだけど、あいにく我々が到着したのは午後2時くらい。 そうするとせっかくのアングルも……
超逆光。 曇り空ならばともかく、お日様の下ではこりゃ写真は無理ってな塩梅になってしまうのだ(このページ冒頭の写真は、西日になってから撮ったもの)。 晴れている日の門司港駅下車もしくは乗車、はたまた見学は、午前中か午後遅めをお勧めいたします。 …というわけで、こりゃ写真は無理だなと諦めたところへ、異国語を話す家族というか一族連れが、 「写真を撮ってもらえますか?」 と縋るようにスマホを託してくる。 ときはいま、日本国内において武漢ウィルス蔓延が深刻化する直前(とワタシが勝手に確信していた頃)のこと、なるべくならアジア方面、とりわけチャイナ系の方々とは関わりたくないなぁ…と思っているところへ、いきなりの中国語である。 アジア人と見れば殴り掛かる野蛮な欧米人たちを逆にサル以下と見做しているワタシなので、ここはもちろん期待に応え、なるべく全部画面に入るように頑張ってみたところ、 「パーフェクト!」 というお褒めの言葉をいただいたのだった。 北九州空港には大連との直行便があるらしく、門司港レトロ周辺にもやはりチャイナ方面の方々が多いようだ。 午後イチにはド逆光になってしまう門司港駅ながら、夜は夜で別の顔を持っていた。
ちなみにエントランスの真ん中に、ノミのように小さなオタマサが居ます。 なんだか築地本願寺でかつて撮ったような雰囲気。 肉眼でもこう見えていたのか、ライトアップのためにカメラがそう写してしまっているのか、この時はすでに酔っ払っていたので肉眼の記憶が無いのだけれど、近づいて撮った写真も……
同じ色だ。 なんだか昭和のラブホテルみたい…… …なんてことは、口が裂けても言ってはいけない。 さてさて、そんな魅惑のレトロ駅舎門司港駅を出て少し(ホントに少し)歩いただけで、そこはもう……
ザ・関門海峡!!
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