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わしらは怪しい敷地内探検隊・動物編

 もちろん我々にとっては、藤原紀香よりも動物たちだ。
 なにしろロッジの敷地は水納島よりも広いくらいだから、いくらでも歩き回ることができる。
 そして我々には、ひそかに目的があった。

 カメレオンを見たい!!

 聞くところによると、こういうロッジの敷地内でカメレオンを見つけることができるらしいのだ。
 そりゃ、最近ではペットショップに行けばカメレオンの1匹や2匹いつも観られるようになってはいるけれど、野生のカメレオンはさすがに見られないもの…。
 というわけで、我々は目をカメレオン化させつつ、敷地内を探訪した。

 敷地内には動植物が多い。
 なんといっても鳥の種類が多い。鳥好きの方なら、敷地内で鳥を観察しているだけでも有意義な1日を過ごすことができるだろう。
 ただし鳥の場合は、遠くから観察することはできても、お近づきになるのはムツカシイ。
 その点、敷地内のいたるところで見ることできるコイツは、なかなかにくめないキャラだ。

 オモチャのような毒々しい色合いのこのトカゲ、レインボーアガマというらしい。
 大きいものは30センチもある。
 この派手派手仮面がオスで、メスは土色で地味だ。その地味なメスを追いかけて、あっちこっちでこの派手派手仮面がしきりにアピールしているのである。
 その走り方は、4本足版のエリマキトカゲとでもいうべき大層な動きをする。部屋へと続く小道にも普通にいるから、思わずわざと追いかけて走らせてしまった。

 敷地内では稀にノウサギを見かけたが、最もよく観られる哺乳類はハイラックス。
 ハイラックスといえば、重厚な四駆の大きな車ってイメージだけど、本当はネズミの親戚のような動物だ。
 ただしネズミとはちょっと違うグループだそうで、一昔前は分類上ゾウの仲間だとまで言われていた。
 このゾウネズミがそこかしこで顔を出している。

 これがまたかわいい。
 また、崖の下からバブーンが上がってくることもある。

 これは我々の部屋のすぐ目の前で撮った写真。
 なるほど、こいつたちが鍵のかかっていないドアをガチャリと開けて部屋に浸入するのであるな……。
 あとで聞いた話だけど、ジャグジー付きのスウィートルームにお泊りの方は、ジャグジーの蓋を開けてまさに今水を飲まんとす、という状態のバブーンと目が合ったそうな……。
 津軽の温泉に入るニホンザルのように、バブーンがジャグジーに入っていたら笑うなぁ……。

 さて、我々のカメレオン探索は一向にはかどらなかった。だいたい、どういうところにいるのかってことを知らないのだもの。
 虫を食べるのだろうから、虫が寄り付きそうな花をつけている草木にいるんではなかろうか。
 そう見当をつけてみはしたものの、思いのほか花をつけている草木というのがない。サボテンとか小さな草花とかならそれなりに花を咲かせているのだが、どう見てもカメレオンがいそうには見えないのだ。

 通りかかったロッジのスタッフに訊いてみた。

 「うーん、カメレオンはなかなかいないよ。レアな生き物だ」

 いたら知らせると言って彼は去っていった。
 そうか、そうそういるものではないのか…。
 後刻ヘンリーにも尋ねてみたら、

 「とてもムツカシイ」

 という。
 どうやら、サバンナのような乾燥する地域ではそうそういるものでないらしい。逆にナイロビあたりの郊外のほうが、よっぽど見られる率は高いという。
 それを知らずにいた僕たちは、この時絵に描いたような「徒労」をしていたわけである。

 動物といえば、こういうヤツもいた。

 初日の夕食後の帰り道、部屋の前で見つけた。
 これ、ミミズに見えるかもしれないけれど、実はヘビなのだ。
 メクラヘビの仲間と思われる。
 なんでこんなものまで僕たちが知っているのかというと、その昔水納島の畑でコイツを見つけ、てっきりミミズかと思ったら鼻先から舌がチョロチョロ出入りしていることに気づき、ビックリ仰天、世紀の大発見だと思ったことがあったから。
 それがブラーミニメクラヘビという名で、すでに多くの人が知っている普通種のヘビであるということを知り、力なくうなだれたものだった。
 あの時のことがなかったら、これを見つけて「さすがアフリカ!!」と感嘆していたかもしれない。

 手と比べるものといえば、こいつには驚いた。

 アリである。
 でかい。
 なんだこのでかさは。
 こんなのがウジャウジャと群れていたら、B級パニック映画のように食い殺されてしまうところだけれど、幸いにしてこのサイズのものはあとにも先にもこの一匹だけしか見られなかった。

 そのほか、カマキリやナナフシ、バッタなど昆虫類もいることはいる。ただし、さすがにそれらの詳細な種類がわかるほど我々はマニアックではなかった……。

 あ、そういえば、散歩しているとこういう動物にも出会う。

 マサイのヤギだ。
 さすがアフリカ、ヤギも茶色い………というわけではなく、白いのもちゃんといる。
 ヤギにはヤギの道があるのか、けっこう自由に敷地内を出入りしているようで、ときにはプールまで団体で水を飲みにやってくることがあるという。
 残念ながらそれを見ることはできなかったが、散歩中にヤギさんを見かけることはできた。

 こんな感じで、敷地内だけでも動物たちを楽しむことはできる。
 ロッジのオプションツアーとして、この敷地内を歩いてまわるという「ウォーキングサファリ」なるものがあるが、こればっかりは自分たちだけでも充分楽しめた。

 でも。
 でも。
 やっぱりメインイベントはサバンナだ!!

 いよいよ午後のサファリ出発の時間が迫っていた。
 我々にとってはうれしはずかし初サファリである。デビュー戦だ。
 もう今までだけでも充分に満足しているというのに、この先まだ何が待っているというのだろう。

 旅行はまだ始まったばかり。そしてメインイベントの幕がいよいよ切って落とされようとしてた。
 前途は洋洋として希望の光に輝いている………
 ……はずなんだけど、気のせいかなぁ、なんだかすっごく曇っているような気が…………。
 これじゃ、落とされるのは幕じゃなくて雨粒じゃないのか…?

 あれ??