Dオトナの遠足・定義山

 この日は午前10時にホテルのロビーで集合という段取りが、昨夜の宴席で決定していた。

 うちの奥さんも僕もさすがにその予定は記憶に留めていたので、鈍器で後頭部を殴られたかのような爆睡から覚醒したあと、キチンと居住まいを正してロビーへ。

 すでにアネモネフィッシュさんやイカママさんもお見えになっていて、ひょっとして飲みすぎて気絶中かも……と勝手に心配していたすかてんポチ1さんも無事に合流。
 あれほど飲んでいたのに、なんでみんな元気なんだろう……。

 そこへ、本日我々を知られざる仙台観光スポットへ案内してくださるT夫妻もご到着。

 天気晴朗気分爽快、青空が広がる仙台の街をいざ出発!!

 ところで、この日の予定は、実のところ我々にはまったくの白紙だった。
 最終的な目的地こそ知ってはいたけれど、途中はすべて案内人のTさんご夫妻しか知らない。

 事ここに至っては今さらジタバタすることもない。我々は完全にTさん夫妻に身を委ね、流れるままに仙台を満喫させていただくことにした。

 仙台市街から一路山形方面へ進むと、長いトンネルを抜けたあたりから突然雪深くなる。
 仙台市は、ついには山形県と接しているほどにとても広いので、同じ市内であってもまったく気候風土が異なるらしい。
 なかでも山形方面の仙台市は当然ながら雪深いので、南国から来た我々にとってはいやがうえにも旅情が掻き立てられる。

 途中、森の駅という、活気溢れる野菜直売センターに立ち寄った。
 現地の野菜だけかと思いきや、意外にも守備範囲は全国のお野菜。雪に閉ざされる土地にとって、新鮮野菜を得るためには「現地」にこだわっている場合ではないに違いない。

 その店内にあった飲食コーナーの、休日限定のカレーライスがとっても魅力的だったものの、1人だけここでゴハンを食べるってのもナンなのでオトナの配慮でグッと堪え、次なる目的地に辿り着いた。

 定義さん(定義山)である。

 仙台市民の憩いの場のひとつとも言われるこの定義さん、仏教寺院的正式な呼び名は極楽山西方寺(浄土宗)というそうだけど、誰もそんな名前では呼ばず、親しみを込めた定義さんという呼称が一般的らしい。

 まるで高名な坊主が発見したと伝えられる温泉地のごとく、お寺開山の背景には平家の落人伝説があるというこの定義さん。
 しかし我々の目的は、上の写真の山門を眺めるためでも、本堂へのお参りでも、五重塔を眺めるのでもなく、ましてや誰でも撞けるという鐘を鳴らすためでもなく、ただただこれなのであった。

 ご存知、定義さん名物・三角油揚げ&豆腐田楽♪

 ご存知…などと言いつつ、ここを案内してもらっている我々の全員が、名物はおろか定義さんそのものの存在すら知らなかったのだから、こうして地元の方に案内していただかなければ、おそらく今後一生知ることなく終わっていただろう。

 皆、初めての味覚に舌鼓を打つの図。

 一見すると、昼食前にいただくにはややたじろぐサイズながら、そこはそれ油揚げのこと、ひとたび口に入れるとまるでシフォンケーキの如く、堆積のわりにボリュームを感じさせない見事な食感。

 これは当然ビールでしょう!!

 とばかり、さっそくすかてんポチ1さんとうちの奥さんはビールを買いに。
 これがまた、計ったように隣に酒屋さんがあるのだ。

 この定義さんの参道には、この定義とうふ店のほかにも様々なお店が軒を連ねていて、いわゆるB級テイスト風の屋台がそこかしこで手招きしていた。

 そこでついつい食指が動いたのが、まずこれ。

 このあたりの(もっぱら山形の)名物、玉こんにゃく@4玉150円
 出汁が染み染みの味がシアワセを醸し出す。

 後日山形の方にお聞きしたところによると、本来四角形に作るこんにゃくながら、地域的に貧乏なため四角にするための枠を作るお金が無い、そのためやむなく丸く形作ってきたからこその名物なのだとか。
 またその方によると、山形はこんにゃく芋を作っていないにもかかわらず、青森県とならぶ日本一のこんにゃく消費県なのだそうな。

 そんな由緒とは関係がなさそうな一品も。

 肉巻きおにぎり。
 これはかなりツボだった………。

 不思議なことに、このお店の屋台にはビリケンさんが座っていた。
 あれ?仙台四郎さんじゃないんですか??

 「四郎さんは中にいるよ!」

 やっぱりいるんだ……。

 お店をいろいろ物色しつつ参道を徘徊した後、いよいよ昼食という段になった。
 おそばでもいただきましょう。

 蕎麦湯なるものの存在を二十歳過ぎまで知らなかったほどにうどん文化で育ってきた僕なので、そばについて語るなにほどの知識もない。
 けれどこちらの蕎麦屋さんでいただいた完璧なまでのアルデンテな蕎麦はかなり美味しかった。

 迷わず冷酒をオーダー。

 いやあ、いいコンコロもちでございますなぁ!!

 ドライバーであるTさんは飲むことができないというのに、美味い美味いと酒をすする我々夫婦&すかてんポチ1さん。
 我々夫婦だけだったら肩身が狭いところ、1人で3人分くらいのパワーを発揮しまくるすかてんポチ1さんのおかげで、安心して酒を楽しむことができるのであった。

 なにはともあれ、県外の人間にとって知られざる仙台市民の憩いの場初体験、Tさんご夫妻に感謝!

 さあてこのあとは、ニッカ!!

 え?ニッカ??

 どーゆーこと??