Fオトナの修学旅行・作並温泉

 いやはや、盛りだくさんの充実した1日だったなぁ…………

 ……って今日1日を振り返っている場合ではなかった。
 本日のメインイベントはこれからなのである。

 この日の最終目的地は、作並温泉!

 今宵この温泉宿でみんな揃って宴会というのが、本日最大の目的なのだ。定義さんもニッカも、仙台市街から作並温泉へ至る道中にあるからこそのルートだったのだ。

 が、残念ながらイカママさんは明日からお仕事。
 今晩も仙台に滞在するわけにはいかなかった。

 1時間に1本しか運行していない仙山線の仙台行き列車の時刻に合わせ、Tさん号に乗り合わせていた我々県外組とTさん夫妻とでイカママさんをお見送り。

 この作並駅、改札がない。
 そのため、見送る側もそのままスルスルとホームまで行けてしまった(切符は、写真左側の室内にある、売店のようなところで買えるようになっている)。

 そこで、思いも寄らぬ事実が発覚。
 これは、この作並駅の駅名の由来が書かれてあるボードである。

 この説明板によると、仙台〜作並間で日本初の交流電化試験が行なわれたそうな。そう言われてもなんのことやらわからないけど、とにかくそれはのちの新幹線の足がかりとなる試験だったらしく、その記念碑がホームにもあった。

 が、注目すべきはそんなことではない。
 それは冒頭も冒頭、1行目である。

 なんと作並温泉は、721年に遊行僧・行基が発見したと言うのだ。

 行基!!

 昨年末に訪れた丹後・木津温泉もまた、奈良時代に僧・行基が発見したのではなかったか。
 丹後地方からここ作並まで、電車や車で来たって相当時間がかかるというのに、こんな遠国の温泉まで発見しているだなんて……。

 そういえば、かつて訪れた鉄輪温泉を開いたのは一遍上人だったよなぁ。
 坊主って温泉発見マニアなのだろうか。

 気になるのは「遊行僧」という言葉。
 遊行ってなんね?
 遊んでばかりいる坊主なら約1名まんざら知らぬでもないけれど、きっと異なる意味に違いない。

 ……と思ってウィキペディアで調べてみると、「遊行(ゆぎょう)とは、仏教の僧侶が布教や修行のために各地を巡り歩くこと。」だそうな。
 そして、「空海、行基、空也、一遍などがその典型的な例である。」って。

 なんと行基さんは、弘法様や一遍上人と同列に並ぶお坊様だったのである。
 考えてみると、一遍上人は鎌倉時代のヒト。奈良時代に生きた行基さんの遥かな後輩ということになる。
 ひょっとして、先輩行基の温泉発見伝説に触発され、それでは拙僧も!!とばかりに温泉開設を目指していたのだろうか……。

 いずれにしても、諸国を練り歩くこと自体が修行のような遊行僧、丹後地方であれ陸奥地方であれ、あちこちに出没するのも当たり前の話だったのだ。

 などという、他の方にとってはどうでもいい発見に驚いているうちに、イカママさんを乗せた列車は、仙台へ向けて発車したのだった。

 こうして1人だけ去っていく様子は、なんだかアメリカ横断ウルトラクイズで、トメさんに慰められながら戦線を離脱する敗者のよう………。

 イカママさん、また島でお会いしましょう!!

 さて、イカママさんをお見送りした後は、いよいよ温泉宿である。
 今回我々がお世話になるのは、「
La楽リゾートホテル グリーングリーン」。

 思わず、

 〜♪ある日パパと2人で 語りあったさぁ〜〜

 と歌いたくなるような名前の、巨大温泉ホテルだ。
 温泉といえば鄙びた宿、という方にとっては真逆の要素100パーセントである。

 でも、参戦希望者十数人全員が泊まれて食事ができて部屋飲みができて……となると、直前に予約できるのはキャパシティの大きなホテルしかない。

 それに!
 その昔都内で勤めていた頃は、まだバブルの余韻を引きずる業界だったこともあって、社員旅行は毎年海外と決まっていた。
 それはそれで豪勢で楽しかったものの、今の仕事を始めて以降、おりにふれ憧れてしまうのが、

 熱海あたりの温泉で、一泊してドンちゃん騒ぎをする社員旅行!!

 由緒正しき昭和の社員旅行をしてみたかったなぁ、というのが、サラリーマン生活の唯一の心残りなのである(ちなみにうちの奥さんは、水族館時代にそのものズバリの社員旅行しかしていない)。

 そんな憧れの熱海温泉社員旅行のイメージに、ここLa楽リゾートホテル グリーングリーン………

 まさにピッタリ!!

 聞けばTさんたちが子供の頃に大々的にオープンしたホテルだそうで、遊興施設も付随していることから、家族で休日に遊びに来るところ、という場所だったそうな。

 それから三十数年の月日が流れ去った今、さすがに建物自体はややくたびれた感があるものの、それでもやっぱり館内は広大だ。

 そして、肝心の温泉は………

 その名も「じゃぶ〜ん」。
 それを知らなければ天海祐希に「知らないのぉ!?」とつっこまれる東芝の洗濯機のようではないか。
 そのじゃぶ〜んの内湯から続く露天風呂は、まるで屋外プールのような巨大さ。しかもそのライティングときたら……

 ああ、写真でお見せできないのが残念!!

 まさに夢に描いていたバブル時代の熱海の温泉のようで、心ひそかに狂喜していたのは言うまでもない。

 ひとっ風呂浴びたあとは、おまちかねの食事である。
 今宵のメインイベントはこのあとの部屋飲みではあるのだけれど、食事は食事としてキチンと採るべく予定されていたのが、午後7時30分からのバイキングスタイル。

 ホントはもっと早い時間の予約をしたかったところ、さすが3連休、7時30分からしか空きがなかったのだとか。

 ま、チャチャッと食べてあとで飲むとしますか。

 と、みんな揃って浴衣姿でツンツルテーン♪と夕食の場ファンタジーホールへと出向くと……

 入り口付近に長蛇の列が。

 へ?

 そうなのだった。
 温泉はそれほど混んでいなかったから、さほど宿泊客はいないのか思いきや、どこから溢れてくるのか、いるわいるわ、夕食はまだかまだかと待ち構えていた人たちが、わんさか待機していたのである。

 そんなてんやわんやの状況にもかかわらず、昨夜の伊達藩長屋酒場で飲んでいた時と同じく、ここでも宴会最前線部隊になる「Z」チームOSコンビがシャキシャキッと動いてくれて、総勢15名がまとまって座れる場所をキープ、そのうえテーブルにはズワイガニをパパパパパッと用意してくれていた。

 うーん、実に宴席で頼りになる仙台チームZ。
 仙台は人材の宝庫なのか。

 それにしてもこのバイキング会場「ファンタジーホール」、その広大なことといったらない。
 ビュッフェスタイルなので大勢のお客さんは会場狭しと動き回る。その勢いはウワサに聞くバーゲン会場のご婦人方もしくは開店直後のパチンコ屋のようで、やたらと広いフロアで繰り広げられるその模様は、ただただ呆気にとられるほどに壮観だった。

 この雰囲気、何かに似ている?

 ずーっとそう思っていたところ、家に帰ってきてハタと気がついた。
 これって、5〜600人規模の沖縄の結婚披露宴会場が、まかり間違ってビュッフェスタイルになったようなものじゃなかろうか。
 舞台はあるし、その上には巨大なスクリーンでムービーが流れているし(マグロ解体ショーの様子)、そのわりには誰も舞台など気にせずめいめい勝手に飲食に励んでいるし………

 似ている。

 まぁしかし、当初こそ雰囲気に呑まれかけたものの、ペースをつかむとだんだん落ち着いてきた。
 しかも落ち着いてビュッフェコーナーを眺め回してみると、それぞれはかなり気合が入ったメニューの数々。なかでもこの日この場で解体したばかりなのであろうマグロメニューは、さすが国内有数の近海マグロ水揚げ量を誇る宮城県、ビュッフェスタイルだからといって、けっして侮ることのできない本格派のお味だった。

 さてさて、胃袋も落ち着いてきたことだし、ここらあたりではい、チーズ!!

 元祖仙台チームだったC嬢も、今では仙台チーム別働隊Mを率いる(?)2児の母に。
 あ、ちなみに隣にいるご主人のMさんこそが、昨夜ワタシからアルプスの少女攻撃をくらっていた方………。
 さらにちなみに、手前の少年コータローは、この齢にしてすでに3度も水納島に来ているコアなリピーターである。

 この写真の左奥のほう、すなわちこのテーブルの列の半分までが、今回の関係者。
 この場ですでに宴席のようなものなのだった。

 それでもやはり、今宵のメインイベントは部屋飲み!!

 なんだかたががはずれたように食べて飲んでしまったけれど、ここからが本番なのである。

 会場は、男子部屋として北のマスター、Tさん、そして僕の3名にあてがわれた部屋。ベッドルームと和室のほかに、リビングルームがある。部屋飲みするため以外になんの意味があるのかというくらいにやたらと広い。

 一大セレモニー的な夕食を終えた後、人心地ついた方から順に集合。

 酒も肴も、仙台チーム本隊、Z、別働隊のみなさんが完全手配。すべてを収納できる冷蔵庫はないかわりに、気温ヒトケタ代前半もしくは氷点下のベランダが天然の冷蔵庫。

 さあ、あとはただ飲むだけ!!

 こんなにたくさんの人が集いながら、終電を気にする必要も、明日のダイビングを気にする必要もなく、ただ目の前の酒に集中するだけでいいシチュエーションなんて、四十を過ぎてからそうそうあるものではない。

 弛緩する脳が、さらなるお酒を求めていく……。

 そうこうするうちに、別の部屋で満を持していたらしいZチームも合流。
 ああ、なんて楽しい宴席なんだ!!

 こんな楽しい宴席で、すかてんポチ1さんが黙っているはずはない。
 なにしろ飲んでいなくったって楽しげににぎやかな方なのである。それがこんな楽しい宴席とくれば、12気筒のエンジン全開でぶっ飛ばしまくるのは当たり前だ。

 が。

 すかてんポチ1さんの燃費は、往年のアメ車・シボレーコルベットスティングレイなみなのであった。

 せっかくの楽しい宴席なのに寝てしまうなんて……。

 いやいや、すでに時ここに至ってこの場の西太后になっていたすかてんポチ1さんなので、このまま静かに夢の世界にいていただいたほうが……

 だというのに、隣に座っている北のマスターが、及び腰でいながらわざと地雷を踏むのである。
 そのたびに、

 「ん??」

 ああ、西太后が目覚めちゃうじゃんッ!!

 な〜んてヒトのことを笑っていた僕だったのに。
 こんな楽しい場にもかかわらず、急速に意識がパラレルワールドへトリップし始めてしまった。

 あれ??オレ………眠いの??

 まるでニッカド電池のごとく……って、つまりは幼稚園児のごとく、カラータイマーが点滅する間もなくいきなりエネルギーが尽きてしまった。

 周りでは、いよいよ宴席に花が咲いている。
 ああ、楽しそうだなぁ。

 でも今の僕に最も必要なのは……………

 布団だ。

 シーズン中ならありえないけれど、なんてったって今はプライベートタイムなんだもん。眠い。ならば寝ろ。

 ああ、隣の和室に敷かれている布団が極楽浄土に見える………。

 気がつくと夢の中。
 その布団は北のマスターのナワバリになるはずだったにもかかわらず、理性のタガがはずれた酔っ払いは、本能の赴くまま、にぎやかな宴席を顧みることなく深く静かな海の底へ没していった。