5・ホテルニューグランド

 リーダーT沢さんにひとしきり界隈を案内してもらったあと、ようやく我々は今宵から2晩お世話になるホテルに着いた。

 ホテルニューグランドである。 


ニョキッとそびえているのが、我々が泊った新館

 中華街の入り口がすぐそばという、胃袋中華街状態の僕にはこのうえない立地だ。
 そして知る人ぞ知る、由緒正しき老舗のホテルなのである。 
 …と偉そうにここでは書いているけれども、そんなことは露ほども知らない僕は、ロビーに入った途端、なんだか映画「有頂天ホテル」みたいだと思ってしまった。
 しかも、作り笑いの道何十年とでもいいたくなるような、微笑み仮面のスタッフがいて、その流暢かつ滑らかな敬語、丁寧語の数々は、さすが老舗のホテル!!弁舌さわやかではない僕は思わず舌を巻いた。

 値段を聞いたら緊張して寝られなくなりそうなので、そこには触れずにずっといたものの、室内はやはりビジネスホテルとは格が違った。

 部屋そのものやベッドの広さもさることながら、絨毯がフカフカなのである。やがてそれを身をもって証明することになる……。

 そしてこのカーテンを開けると……

 山下公園と道路を挟んで隣接しており、部屋からは海もみなとみらいのビル群も見える。清濁併せ呑む横浜の、デートコースには欠かせない空間を一望できる立地だ。
 ちなみに、夜はこうなる。

 この写真、以前ミクシィの日記で「この写真はどこから撮っているでしょう?」というモンダイを出したことがあったんだけど、はい、正解はホテルニューグランドの部屋から、でした。<わかるわけないっつうの。
 当然僕はそういうことはまったく知らず、リーダーT沢さんにチェックインを済ませてもらったあと、有頂天ホテルスタッフ的ニコニコ仮面に部屋に案内されてすべてを知った次第である。

 ともかく、この日の最終目的地に無事にたどり着いた。
 このあとリーダーは明日の二次会用の何かをデパートでそろえなきゃなんないとかで、いったん別れることになった。有給を取ってこの日名古屋から駆けつけてくる隊長も5時過ぎにはホテルに着くということだったから、6時にロビーで集合ということにした。

 時刻は午後4時半。6時まで時間はたっぷりある。
 であればひとまずゆっくり部屋でくつろぎたいところだったが、僕にはのっぴきならない用事があった。
 礼服用の白いネクタイを買わねばならないのだ。

 すでに30を過ぎてはや9年、礼服を着る機会といえばお葬式という図式にすっかりなっている今、白いネクタイを久しぶりに取り出したらもんのすごいシミのオンパレードだった。
 上着に隠れるところならともかく、どうやっても目に付く場所だ。
 さすがの僕でもこれはちょっと…というモノだった。

 でも白いネクタイなんて駅のキオスクにだって売ってるくらいなんだから、横浜ともなればどこでだって買えるだろう。

 と高をくくっていた。
 それが、あんなに苦労することになろうとは……。