水納島の魚たち

アカスジウミタケハゼ

全長 25mm

 ウミタケハゼの仲間たちは、サンゴやカイメンなど他の動物たちの表面にチョコンと乗っていることが多い。

 ただし表面とはいっても陰に隠れていたり、起伏に富んだソフトコーラルだったりするので、そう目立つ存在ではない。

 そのうえウミタケハゼの仲間たちは、ひと目ではもちろん、写真でさえ種類がわからないビミョーなモノが多く、撮っても撮っても正体が判明せずにもどかしい思いをさせられるグループでもある。

 その点このアカスジウミタケハゼは、ウミタケハゼの仲間の中では群を抜いて他との区別をつけやすい。

 おまけにミズタマサンゴや塊状サンゴの文字どおり表面に居てくれることが多く、お近づきになろうとして寄ってみても、さほど逃げ隠れせずその場にとどまってくれる。

 とってもお利口さんなのだ。

 その場に居続けてくれるから……

 …アクビもちょくちょく見せてもらえる。

 育つとドーム状に丸くなっていくような塊状サンゴにいることが多いアカスジウミタケハゼだけど、ミズタマサンゴの表面にいることもある。

 固くゴツゴツした塊状サンゴと比べれば、「バブル」部分は相当プニョプニョしているミズタマサンゴ。

 アカスジウミタケハゼたちは、住処とするサンゴ表面の質感にはさほどこだわりはないのだろうか。

 住み心地がどうかはともかく、ミズタマサンゴはフンワカポワポワしたやわらかい光の世界を演出してくれるので、そこにいるアカスジウミタケハゼはとってもビジュアル系になる。

 以前はこのようにミズタマサンゴの表面にアカスジウミタケハゼが大小1匹ずつくらい常にいるところがあったので、オンザバブルコーラルのアカスジウミタケハゼをいつでも観ることができた。

 ところがミズタマサンゴには、ご存知のように美しいエビも高頻度で暮らしている。

 日中の明るさが苦手なバブルコーラルシュリンプ(昔から誰もが知っているエビなのにいまだに和名が無い)は、日が直接当たらないところでこのようにミズタマサンゴのプニョプニョの隙間から半身だけ出していることが多い。

 この状態を眺めるだけで満足してくれればいいのだけれど、エビカニ変態社会のなかには、無理矢理全身を拝もうとする方々もいる。

 なかでも自分の被写体以外にはまったく興味がないという方向に先鋭化してしまっている方々は、エビさえ撮れればそれでOKという感覚になっている傾向があり、宿主のサンゴのキモチを顧みることはまったくといっていいほど無い。

 そのためエビカニ原理主義変態社会の方々が散々サーチをしたあとのサンゴたちは、徹底的に縮こまっていたり引っ込んでしまっていたりする。

 いつも元気いっぱいでいてくれてこその宿主なのに、縮んでばかりいれば、そこを住処としているアカスジウミタケハゼの姿が見えなくなるのも当たり前。

 近年は多くのダイバーが訪れる根になってしまったがために、あれほどいつでも姿を見ることができたアカスジウミタケハゼはミズタマサンゴ上から消えてしまい、このところとんとご無沙汰になっているのだった。

 全体的に見てもなんとなく出会う頻度は減っている気がする。

 居たとしても小さめのものが多く、↓このようなジャンボサイズを観る機会も無くなった。

 近年見ることができるアカスジウミタケハゼの「大きめの子」といえば、せいぜい冒頭の写真くらいのサイズ。

 それと比べてこの顔つきの違い、↑これがいかにデカい個体かということがわかる。

 昔はこれくらいのジャンボサイズもちょくちょく観ていたような気がするんだけど、なにしろフィルムで写真を撮っていた時代のことなので、実は当時でも「おお…デカい!」と唸っていたのかもしれない。

 残念ながら、記憶はすでに霧の向こうに去ってしまった。

 今でも探せばどこかにいるんだろうか、ジャンボ君……。