水納島の魚たち

ベニハゼ

全長 35mm

 変態ダイバーが潜れば潜るほど未知なる種類が登場してくる、といっても過言ではないベニハゼの仲間たち。

 その数多いベニハゼ属の仲間のなかで、最も早くから(1906年)その存在をヒトに知られていたのが、このザ・ベニハゼだ。

 その名のとおり通常の3倍速そうな赤いボディは、水深10m以浅に暮らしていることもあって、写真のように白い砂礫底にいるとわりと目立つ(小さいけど)。

 彼らはリーフ際の壁際ギリギリの海底付近、それも直接潮流を受けないような入り組んだ奥のほうにいることが多いから、そういう場所に行くと、そこに1匹、こちらに1匹という具合いに、わりと数多くいることに気づく。

 もっとも、白い底にいると目立つように見える赤い色も、すぐそばに避難場所の岩肌があって、様々な付着藻類がついてなにげにカラフルな岩肌では、この赤い色がカモフラージュの役に立っていることがわかる。

 おそらくは↓こういう岩肌が擬態モデル(?)なのだろう。

 あ、ちなみにこの写真のどこにもベニハゼは写っていないので、探さないでくださいね(汗)。

 ウカツに近寄って、せっかくリラックスしている彼らを怖がらせてしまうと、こちらが存在に気づく前にこういうところに逃げてしまうから、見えてなくても居ると信じてそっと近づくに如くはない。

 リラックスしている時のベニハゼは、すぐ近くに避難先の岩肌がある場所で、チョコンとたたずんでいる。

 体が斜め上に向くポジションどりが好きらしく、たいていの場合、下から上を見上げているような感じになるベニハゼ。

 ただしそうなると例によって横からそのフォルムを見せてもらえない場合が多く、顔とお付き合いするしかない。

 それはそれで可愛いからいいのだけれど、ベニハゼとは別に、そっくりなチゴベニハゼという種類がおり、両者を区別するうえで重要な部位のひとつ、体後半部下側が見えないと、このハゼがいったいどっちなのか、少なくともワタシには顔だけで判断がつかないという困った問題がある。

 その識別点についてはチゴベニハゼの稿に譲るとして、ともかくせっかくだから横からも撮らせてもらいたいところ。

 でも彼らの居場所が居場所だけに、頑張っても…

 斜めが限界ということが多い。 

 ここでさらになんとか真横から…なんてことをやっていると、ここまでガマンして付き合ってくれていたベニハゼもさすがに嫌気がさして、ヒョイッと避難場所に去ってしまう。

 それは避けたいからこのまま観ていると、ときおりエサを食べるために宙に浮いてはまた着地、を繰り返してくれるのだけど……

 斜め上からだと、浮いている感がいまひとつなのだった。

 ほぼ真横からその姿を拝ませてくれるベニハゼに出会えたなら、それはとっておきの大チャンス。

 彼のサービス精神に感謝を捧げつつ、岩肌に逃げてしまわないようにそっと覗かせてもらおう。