水納島の魚たち

ハタタテサンカクハゼ

全長 5cm

 多くのダイバーに通行人Aタイプのエキストラ的扱いを受けるものが多いサンカクハゼの仲間たちだから、ひとくくりに「サンカクハゼ」にしてしまっても、人生に大きな影響を受けてしまうヒトは少ない。

 でもサンカクハゼの仲間にも、ひと目で見分けがつくもののなかには、可愛かったりカッコよかったりするものもいる。

 このハタタテサンカクハゼは、サンカクハゼのなかでも特にカッコいい種類だ(※個人の感想です)。

 その名のとおり背ビレが大手家電メーカーの目のつけどころよりもシャープにピンと立っている姿は、戦闘的機能美にも似たフォルムといっていい。

 彼らはたいてい岩陰の薄暗いところに1人で暮らしているのだ(まわりに仲間がいはする)。

 薄暗いところにちょいと開けた砂底にいるものだから、肉眼では暗くて見づらいところ、ライトを当てて観てみると、意外にこのハゼが美しいことに気づく。

 色味といいフォルムといいハタタテシノビハゼに似ているといえば似ているのだけれど、ハタタテシノビハゼがテッポウエビと一緒に住む共生ハゼなのに対し、このハタタテサンカクハゼは他のサンカクハゼ同様他の誰とも共生はしない。

 ペアでいることもまずない。

 その背ビレは、激チビの頃はさすがに「これから伸びてきます」的な長さのようながら(下段追記参照)、3cmくらいの若魚ではすでにビヨンと伸びている。

 もちろんオトナになれば、しっかりクッキリビヨンと伸びている。

 ところが、どういうわけかなかには↓こういうものもいる。

 これだとことさら「ハタタテ」というほどの背ビレではないんですけど…。

 個体差なのか雌雄差なのか、何かに齧られちゃったのか、そのあたりのことは不明だ。

 時間をかけて見つめれば見つめるほど、じんわりと美しさがにじみ出てくるハタタテサンカクハゼ。

 しかしながら、なにしろ薄暗いところにいるものだから、クラシカルアイだとせっかくじっくり粘って撮ってみたら背ビレが短い個体だった、なんてこともありそう……。