全長 35cm
オオスジヒメジほどではないけれど、ホウライヒメジはけっこうでっかくなるオジサンの仲間だ。
けっして珍しいわけではない。
が、かといってそこらじゅうで泳いでいるわけでもなく、ましてや水納島では群れていることはまずないから、観たいと思ったからといってすぐさま観られる魚ではない。
ま、「観たい」という奇特な方がいるとも思えないけど、リーフ際や砂地の根で、激しく餌を探すわけでもなく、忙しそうに泳ぎ回るわけでもなく、ときおり1〜2匹がのんびりしているホウライヒメジ。
リーフ際にいるものは体の色を濃くしているから、光を当てると冒頭の写真のように本当は赤みがかっているのに、肉眼だと赤色が目立たない色になるため、背後が岩だと彼らの存在が際立たない(それが彼らの意図するところだからしょうがない)。
一方、砂地の根に立ち寄っているものは、白い砂地で浮いてしまわないようにとの配慮なのか、色味を薄れさせている。
薄れてはいるものの、そのままのんびり中層を泳いでいるときは、背後のブルーによく映える。
ところで、地中海世界のグルメ業界では、ヒメジ類はけっこうな高級魚として認識されているそうで、オサレーなフレンチでは、「ルージェ」と呼ばれるヒメジの仲間は魚料理の定番なんだとか。
日本にはさすがに本場のルージェそのものの種類はいないから、国内のフレンチではその代替品として、各種ヒメジ類が使われているという。
とりわけこのホウライヒメジは大きさといい美味しさといい、かなり重宝されているそうだ。
その昔、機関長が差し入れてくれることがあったヒメジ類(おそらくオオスジヒメジ)の刺身を皮つきでいただいたら、「オジサンの仲間」と呼ぶのが失礼かも…と思ってしまうくらいにたしかに美味しかった。
刺身の美味さもさることながら、フレンチでもてはやされるくらいなのだから、ポワレにでもしてみればワインが進むこと請け合い。
いかんいかん、海中で彼らを観る目が変わってしまいそう……。