水納島の魚たち

クロモンツキ

全長 35cm

 一般にハギと称されることが多いニザダイ類の仲間たちの名前には、必ず「ハギ」か「ニザ」がついている(本来ニザダイの仲間ではないツノダシは除く)。

 ところがこのクロモンツキは、例外的にハギもニザも無い。

 クロモンツキハギでは長すぎるという、語感優先のネーミングなのだろう。

 名前だけ聞くと、何の仲間なのやらさっぱり不明という弱点はあるものの、ニザダイ類限定ながらも唯一無二的なカッコよさがある(※個人の感想です)。

 パッと見よく似ているヒラニザがわりと水深がある砂底の根の中層付近に集まっているのに対し、クロモンツキはリーフ際から転石帯あたりまでの浅い所でよく観られる。

 複数匹で泳いでいることもあるけれど、単独で気ままに泳いでいることのほうが多い。

 ただこのクロモンツキ、いったいどの状態がノーマルカラーなのかがいまひとつよくわからない。

 冒頭の写真のような色で泳いでいるかと思うと、すぐにこうなる。

 さらに黒化すると……

 まさに黒紋付。

 そうかと思えば、ホンソメクリーニングを受ける際には……

 ジワ〜ッと淡くなって、最終的には……

 まったく別の魚かと思えるほどに。

 こうしてホンソメクリーニングを受けている間はこの色のままなんだけど、近寄るワタシを警戒してこの場を離れる際には、またすぐさま黒くなる。

 体の色はともかく、こうして色が淡いときにゆっくりお近づきになれたおかげで、クロモンツキの口の位置が、なにげにおかしげなことに気がついた。

 シルエット的に、ヒラニザのように先っちょあたりにあるものと思っていた口が、先端よりも下方にあるのだ。

 藻食傾向の彼らとしては、口がこの位置にあったほうが、何かと都合がいいようだ(ヒラニザは動物プランクトン食)。

 このように転石に生えた付着藻類を食べるにしても、口が頭部の先端にあると、逆立ちしなきゃならなくなる。

 それに比べれば、よほど便利な口の位置。

 なるほど、ニザダイの仲間たちって、口の位置で食べ物の嗜好がおおよそわかるってことか。

 クロモンツキさん、お勉強になりました。