水納島の魚たち

ウツボ属の1種

全長 40cmくらい

 この写真のウツボを初めて見つけたのはまだフィルムで写真を撮っていた頃で、それまで海で見たことはないものの、写真はどこかで見たことがあるなぁ、と即座に思い至った。

 当時フィルムの現像は、巻き戻したフィルムをカメラから出して現像に出すまでで早くて1週間、それが現像されて手元に帰ってくるまで早くて1ヵ月、ヘタすりゃ3か月くらいかかっていたから、今のように即座に写真判定とはいかず、記憶に頼るしかない時代だった。

 まだ若かったから記憶も随分ハッキリしていたけれど、すべてが霧の彼方にかすむ今だったらとてもじゃないけどムリ……。

 ともかく鮮明な記憶を携え、後刻家に戻って「日本産魚類生態大図鑑」をめくってみたら、案の定ちゃんと載っていた。
 「どこか」とはこの図鑑のことだったのだ。

 でもそこには……

 「なんの特徴もないウツボで、種は不明」

 とだけ書かれていた。

 なんという解説……。

 今の図鑑ではどう紹介されているのか知らないけれど、かの有名な魚類検索データベースのサイトを見る限りでは、今もなお「ウツボ属の1種」という扱いになっているようだ。

 初めて会ってから後も、忘れた頃に思い出したようにチョコッと登場してくれる彼は、砂地の根のあまり人目につかない暗いところからそっと顔を出している。

 いずれの場合も単2電池くらいの太さ程度で、成長するとそれ以上大きくなるのか、それともオトナでこれくらいなのかはわからない。

 数年前には、まるでミナミホタテウミヘビのように垂直気味に顔を出していたこともある。

 …といいつつ、これもホントに同種なのかどうかは定かではない。なにしろ「なんの特徴もないウツボ」だから。

 ま、違ったところで「ウツボ属の一種」には変わりはないかもしれないけれど。