水納島の魚たち

サンゴトラギス

全長 10cm

 砂地のポイントでは、リーフの外、これから砂底が始まるという場所よりは少し浅い側の、死サンゴ礫が転がるゾーンでよく観られる。

 浅いところにいるトラギスたちは、白地の体に黒色の模様が入るものが多いのだけど、サンゴトラギスは模様が赤系だ。

 サンゴトラギスという名はそれゆえなのだろう。
 少なくとも、サンゴに住んでいるというわけではない。 

 岩場のポイントのガレ場で観られるサンゴトラギスは、周囲が暗いせいか砂地で観られるものよりも赤味が強く、模様が濃い目に出ている。

 メリハリがあるから、個体そのものなら岩場にいるもののほうがモデルとしてはフォトジェニックかもしれない。

 ただ、岩場のポイントでわざわざガレ場の海底を徘徊するのは変態社会にお住まいの皆様だけだから、意図しなければ出会う機会は少ないかもしれない。

 砂地のポイントの場合だと、好むと好まざるとにかかわらずそのゾーンを必ず通過することになるので、必然的に出会う機会は多い。

 もっとも、目の前にいたとしても、彼らはたいていの場合スルーされる。

 「だってトラギスだもん…」

 残念ながら、そういう声もまた、多い。

 サンゴトラギスの個体数はわりと多く、チビからオトナまで、ガレ場に踏みとどまりさえすれば、いくらでも観ることができる。

 自然光のみで観る肉眼では地味ながら、ストロボが当たると本来の「サンゴ」っぽい色味が出て美しい。

 ただし、こうして横から観ると可愛いく見えるのだけど、このサンゴトラギス、前から観ると何気に顔が……

 …スネ夫。

 いや、それは真正面ではなく、顔がちょっと斜めを向いているからかも。

 では別の子の真正面顔を……

 ああ、寄生虫が………。

 多くのダイバーにはスルーされるのに、寄生虫にはスルーしてもらえなかったサンゴトラギス君なのであった。