水納島の魚たち

ササハゼ

全長 18cm(写真は3cmほどの幼魚)

 シーズン中でも遊びで潜るときは、ワタシ同様デジイチを携えて潜るオタマサだけど、基本的にその撮影目的には、お客様を海へと誘うような写真を撮る……なんてことは微塵も存在しない。

 ひたすら我が道を行き、(一部の変態社会人を除いて)誰も見向きもしない、ダニに毛が生えたような生き物を撮っては「ムフフ…」と不気味にほくそ笑んでいるのだ。

 しかしその変態的リサーチが功を奏し、思わぬヒットに巡り合うこともある。

 2014年の夏のこと。

 スカテンが根を覆いつくし、キンメモドキがワシャッと群れていようとも、そんなものには目もくれず、いつものようにダニに毛が生えた生き物を求め、わりと深い海底を徘徊していたオタマサ。

 すると、ふとしたはずみで見慣れぬハゼに遭遇した。

 何の変哲もない砂底に、ポツンとたたずむ小さな魚。

 近寄ってみると……

 なんとササハゼ!!

 成長すれば20cm弱にもなるハゼの、3cmほどのチビターレだ。

 もちろん我々が知るかぎり、水納島初登場である。

 その図鑑的な分布域には沖縄地方もフツーに含まれてはいるものの、彼らは砂泥に富んだ内湾性の海を好むため、本来であれば水納島の海は、彼らが住むには適していない。

 ところがこの2014年はどういうわけか、このほかにもサオトメハゼが(1匹だけ)出現したり、それまでいなかったヒメクロイトハゼが姿を見せるようになったりと、クロイトハゼ属のなかでも内湾域を好むものたちの発見が相次いだ。

 もっとも、サオトメハゼと同じく、ササハゼもその後の出現は今(2020年1月)のところない。

 しかし本部半島周辺だけでもそこらじゅうで行われている狂乱土木工事ラッシュを見るかぎり、将来的には水納島でもそこかしこで目にするようになるのかもしれない…。