水納島の魚たち

セホシサンカクハゼ

全長 5cm

 他の稿でも折に触れ述べているように、同じ種類の魚でも生息環境によってその体色は随分違いがある。

 特に砂底で暮らすハゼ類は、周辺の砂の色によって体色の濃淡が変わるから、水納島の白い砂底にいるハゼは、種類によっては図鑑に載っているものと全然違う魚に見えるほど色が異なる。

 その場合、全体的な色はもちろん、特徴とされる模様の出具合いまで変わってくるからやっかいだ。

 このセホシサンカクハゼもそんなハゼのひとつで、おそらくその名の由来なのであろう背ビレの星印が、白い砂上で暮らすものは随分薄い。

 ただでさえ薄いのに、若い個体となるとさらに薄いのか、↓これなどセスジサンカクハゼと区別がつかなくなる。

 写真で見てさえ薄すぎてわからないところ、背ビレだけを拡大してみると…

 星印がうっすらと。

 以上はすべて、これまでこのハゼを認識できていなかったことのイイワケであるのは言うまでもない。

 ただし冒頭の写真を撮ったときは、セスジサンカクハゼとは何かが違うぞ…と思ったから撮ったはず。

 もっとも1年も前のことなので(2021年)、何がどう違うと思ったのかはまったく覚えていない…。

 覚えてはいないけれど、その背ビレには、薄いながらもハッキリと…

 …星印。

 というわけで、セスジサンカクハゼだと決めつけ、これまでどれほど見逃してきたのかまったく見当もつかないから、このセホシサンカクハゼがいったいどれくらいの頻度で出会えるものなのかということについてもまったくわからないものの、いずれもリーフ際から砂底が始まるまでの、死サンゴ石がたくさん転がっているゾーンで撮っているようだ。

 背ビレにうっすら星印でもう惑わされることはないから、今後は海の中でちゃんと「セホシサンカクハゼ」を認識してみよう。

 さっそく認識できた。

 やはり死サンゴ礫や死サンゴ石が転がる海底にいて、近くにはすぐに逃げ込めそうな穴がたくさん開いている岩肌があった。

 岩場のポイントだから模様が濃い目ということもあるのかもしれないけれど、以前「何かが違うぞ…」と思ったのは、どうやら背ビレのラインが、セスジサンカクハゼよりも濃く太く見えたからっぽい。

 別の場所でも背ビレのスジが太く濃く見える子がいたので、これまたセホシサンカクハゼだろうと思って撮ってみたところ…

 あれ?星印が無い?

 しかし拡大してよぉ〜く観てみると…

 狙いすましたかのように、背ビレの星印のところが傷んでいたのだった。

 目印が消えちゃったら、さすがにセスジサンカクハゼだと思っちゃうかもなぁ…。

 ともかくももうこれで、セホシサンカクハゼをセスジサンカクハゼだと勘違いすることはなさそうだ。