水納島の魚たち

スミレヤッコ

全長 8cm

 かなり昔の図鑑には「珍しい」と書かれていることもあったスミレヤッコ。

 しかしすでにみなさんご存知のとおり、実際はそれほど珍しい魚ではない。

 ただ、住処にしている場所がかなり暗い岩陰で、たまに外に出ている姿を見かけてもすぐに引っ込んでしまうから、なかなか観るチャンスに恵まれない。

 しかも彼らは岩肌をお腹側にするので、オーバーハングの岩陰にいる彼らを見るときは、たいていこういう向きになってしまう。

 美しいその体を、なかなか素直には拝ませてくれないスミレヤッコなのである。

 ただし近年は、砂地のポイントのリーフ際(水深7、8mくらい)で観る機会が増えている。

 同じようにオーバーハングの岩陰だから見づらいことは見づらいけれど、いつ訪れてもたいてい同じ場所に居てくれるという意味では随分観やすくなっている。

 昔は砂地の浅いところでスミレヤッコなんてあり得なかったのに、たまたま居着いてしまった子が、その後も長生きし続けているのだろうか。

 追記(2020年4月)

 スミレヤッコの青い部分と黄色い部分の配色には個体差があって、こういう感じになっているものもいる。

 これを撮ったのは2017年のことで、その2年後に同じポイントのリーフエッジのオーバーハング下で撮ったのが↓こちら。

 きっと同じ子ですよね?

 個体識別できちゃうんだ、スミレヤッコ……。

 上半分が青だけ、というものもいるようながらそれはレアケースで、たいてい脇のあたりから後頭部(?)あたりまで黄色い部分が突き出ている。

 それでも背中側は青で繋がっているのが多いと思うのだけど、以前出会った若いスミレヤッコは↓こんな感じだった。

 ちなみに青い部分が繋がっているタイプのオトナは…

 背中のところで青が繋がっているのといないのとでは、まったくイメージが違って見える。

 これを雌雄による違いとされていたこともあるようながら、どうやら性別には関係のない個体差らしい。

 手元にある写真には青が繋がっているタイプばかりなんだけど、自然下ではどうなんだろう?

 スミレヤッコを観る時には、青色が繋がっているかどうかに注目しようっと。

 追記(2020年12月)

 今年(2020年)6月に、砂地のポイントのリーフ際で出会ったのは、やっぱり……

 繋がっているタイプだった。

 一方9月にドロップオフ的環境の岩場のポイントで出会った子は……

 セパレートタイプ。

 若魚というほど小さくはないものの、成熟オトナよりは小ぶりに見えた。

 今のところ手元の写真を見るかぎりでは、砂地のポイントのリーフ際の浅いところで撮ったものはすべて繋がっていて、岩場のポイントのわりと深めで撮ったものはセパレートされている。

 今度は砂地のポイントでセパレートがいるのか、岩場のポイントの深いところに繋がったタイプに会えるか、に注目してみようっと。