水納島の魚たち

タナバタメギス

全長 5cm

 2017年の年明け早々のこと。

 例年であれば真冬だから相当な覚悟を持って臨まなければならない水温のはずのところ、温暖化のせいか1月だというのに水温は24度もあった。

 なので普段の冬だったら寒さのあまりスルーしてしまうであろう砂地の根のほんの小さな暗い陰に目を向けると、小さくヒョロ長い魚影が見えた。

 はて、そのシルエットはメギス系のニセスズメ類に見えるけど、よくこういう場所で見かけるホシニセスズメにしては、なんか細長すぎる気がする。

 暗がりにいるからそのままではよく見えないので、ストロボに装備されている赤色ターゲットライトを珍しく点灯させてじっくり観てみた。

 暗がりにいる魚から見れば、明るい側からカメラを手にヌウッと覗き見るダイバーなんて恐怖以外の何物でもないから、とりあえずは奥の穴倉に逃げてしまう。

 いつもの年のように寒ければ、ここで諦め、スゴスゴと立ち去るところである。

 ところがこの時はさほど寒くなかったので、とにかく無害を装ってそのまま静かに待っていると、再び顔を出してくれた。

 とりあえずそこでパシャ。

 ん?

 こんなに腹ビレが長いニセスズメなんていましたっけ?

 うーん、横向きになってくれないかなぁ…

 あ♪

 やっぱ細長いわ、このヒト。

 それに、観ているとその長い腹ビレを杖代わりのようにして、ときおり着底している気配もある。

 もう少し別のポーズを見せてくれないかなぁ…

 あ♪

 うむ、こんなに腹ビレ(鰓の下のヒレね)が長いニセスズメは見たことないぞ。

 ゲストによる観察例はあるものの個人的にはまだ見ぬコガネニセスズメかなと思ったけれど、ネット上の写真を見る限り、彼らの腹ビレもこんなに長くないようだ。

 どうやら人生初であることは間違いなさそうなこの魚、いったいぜんたいその正体は??

 当サイト内の拙日記上にて尋ねてみたところ、当時はまだ魚に興味をお持ちだった世界のM下さんが、たちまち疑問を解決してくださった。

 この魚、タナバタメギスというらしい。

 ニセスズメのようでいながらタナバタウオのような名前のフリをしつつ、その実メギスであるという、ほとんどウナギイヌのような名前なのだった。

 世の変態社会のみなさんにはお馴染みのようながら、一般社会にはほとんど知られていないといってもいい。

 おまけに暗がりにいるし小さいし、出会うチャンスに恵まれたとしても、気づかずにスルーしているかもしれない。

 数少ない遭遇チャンスを逃さないためにも、彼の特徴的な腹ビレの長さをインプットしておこう。

 このフォルムにピン!と来たら、千載一遇。