水納島の魚たち

トンガリハゼ属の1種

5cm

 一望白い砂だけに見える海底にも、目を凝らせば実に様々な魚たちが息づいている…ということは多くのダイバーの知るところ。

 なかでもハゼの仲間は数多く、特に共生ハゼ類はエビちゃんが作る巣穴がわりと目立つおかげで、種類さえ問わなければどんな節穴アイのヒトでも見つけることができる。

 一方、同じような砂底に暮らしてはいても、モヨウシノビハゼのようにハゼ単独で、なおかつ個体数がさほど多いわけではないモノたちとなると、眼を皿のようにしてひたすらサーチするという変態ダイビングでもしないかぎり、偶然に期待するしか方法がない。

 このトンガリハゼ属の1種も、そういったハゼの仲間だ。

 けっして劇的に珍しいわけではないものの、ではどこにいるかと問われても困ってしまうくらいには、出会う機会は少ない。

 たいていの場合、他の何かをサーチしているときにたまたまいたり、間借りしているのか、共生ハゼの巣穴の傍にいたりしてくれるおかげで出会えている。

 ちなみにこのハチマキダテハゼとニシキテッポウエビコンビの巣穴の傍には、3匹ほどたむろしていた。

 そうかと思えば、彼ら固有のものなのかどうかは不明ながら、少なくとも共生ハゼのものではない巣穴の周りに、5匹ほどがたむろしていることもあった。

 ときには近い仲間のモヨウシノビハゼと一緒にいたこともある。

 これをみると、先ほどの5匹がいた巣穴はひょっとするとモヨウシノビハゼのものなのかもしれない。

 けれどモヨウシノビハゼの稿でも触れているように、モヨウシノビハゼの巣穴らしき穴も、本来誰のものなのかハッキリしていない。

 図鑑によると、トンガリハゼ属の1種はトラフシャコの巣穴の周りにもいることがあるらしい。彼らは砂底を徘徊しつつ、絶えず避難場所を確保している、ということなのだろうか。

 ところで、「トンガリハゼ属の1種」といっても、まだ分類学的研究が進んでいないグループらしく何種類かいるようで、冒頭の写真のものと、↓このハチマキダテハゼの傍にいるものとは、どうやら種類がことなるようだ。

 冒頭の写真の子は目の周りは黄色いだけでこれといった模様は入っておらず、そのかわり背ビレに明確な黒斑その他模様がある。

 それに対しハチマキダテハゼの巣穴そばにいた↑コイツは、背ビレにこれといった特徴がないかわりに、目の周りに小さな黒い点々が目立つ。

 そのどちらでもなさそうなものもいた。

 上半身だけしか撮れていなくて恐縮ながら、ここだけ見ても別の種類っぽいことがわかる。

 …これもトンガリハゼ属の1種ですよね?

 ところで、冒頭の写真からずっと、背ビレを開いている状態の写真ばかり揃えてあるけれど、なにげにこれはけっこうレアケースで、せっかく出会えてもほとんどの場合…

 …↑このように前の背ビレを閉じたまま。

 待てど暮らせど開いてくれないことのほうが多いから、冒頭の写真のような気前のいいポーズをしてくれていたら、それは千載一遇と思っていただいて間違いない。