水納島の魚たち

ワヌケトラギス

全長 15cm

 ターボスネイル生息密度調査の際は、通常のボートダイビングでは立ち入らないくらいに浅いリーフ上をウロウロする。

 そういう環境を好んで暮らす魚たちは、普段のボートダイビングでは出会えないものが多いから、背が立つほどの浅いところに非日常があってとっても楽しい。

 もちろんボートダイビングで観られる魚もたくさんいるから、眼下に現れるトラギス類も、お馴染みのオグロトラギスだとばかり思い続けて四半世紀。

 それがまさか、これまで認識していなかったトラギスだったとは。

 カメラを携えて潜っている時は、目的によってはリーフ上の浅いところも満潮時を狙ってタンクを背負って徘徊する機会が増えているこのごろなので、眼の端をチョロチョロしているトラギスも当然ながら目に入る。

 またいつものオグロトラギスか…とスルーしかけたその時、ふと気がついてしまった。

 オグロトラギスじゃないんじゃね??

 帰宅後調べてみれば、ワヌケトラギスなのだった。

 ずっと昔から名前だけは知っていたイトコに初めて会ったような不思議な感覚……。

 しかし名前は知っていたのにこれまでまったく気づかなかったくらいだから、ひょっとして小笠原あたりにはフツーにいるけど、沖縄では珍しいトラギスなんじゃ?

 …と思いきや、沖縄でもフツーにいるらしい。

 というか、後日ターボスネイル生息密度調査がてらリーフ上をウロウロしてみたところ、いるわいるわ、思いっきり普通種じゃないか、ワヌケトラギス。

 どうやらこれまで水面上から眺めては「オグロトラギスね…」とスルーし続けてきたトラギスたちは、ほとんど全員ワヌケトラギスだったらしい。

 でも水面から↓こう見えたら……

 …オグロトラギスって思っちゃうでしょ?< 共感強要。

 リーフ上に暮らしているのだから普段のダイビングで会えないのは仕方がないにしても、これまでおりにふれ会っていたのに四半世紀以上も気づかないままでいたなんて……。

 ひとたび違うとわかればオグロトラギスとの差異はいろいろ見えてきて、そもそも全体的なカラーが緑がかっている。

 これは浅い岩肌に蔓延る藻の色味に合わせているんだろうか。

 ちなみにワヌケトラギスの最大の特徴として紹介される部分は、尾ビレの模様だ。

 いわく、尾ビレの黒色斑の直後に白色斑があることが特徴という。

 でも……

 オグロトラギスも似た感じなんですけど……。

 ま、尾ビレだけに囚われずとも、体側の柄なども見るからに異なっているし、腹ビレの色味も全然違うから、今後はもう二度と見紛うことはあるまい。

 ただ。

 図鑑に掲載されている写真のキャプションでは、オスとメスを明確に区別しているのだけど、いったいその差異はどこにあるのか、本文中ではいっさい触れられていないし、写真を見比べても違いがさっぱりわからない。

 その点実際に海中で観ていると、小柄な個体がいて(冒頭の写真)、そのあとそこにヌーッと大柄の個体↓が出てくると……

 そのたたずまいから前者がメスで後者がオスなのであろうと類推することができる。

 だからといって具体的にどこがどう違うという明確な違いはやはりわからないんだけど、なんとなく腹ビレの立派さが異なるような気が…。

 その立派な腹ビレで鎮座している姿は、やっぱりいかにもトラギスっぽい。

 ワヌケトラギス、今まで気づかずにいてごめんなさい。

 今日から君も「顔見知り」だ。