水納島の魚たち

ゼブラウツボ

全長 80cm

 このウツボを初めて見たときは、とんでもなく珍しいウツボを見てしまったと思って狂喜したものだった。

 当時(90年代初頭)すでに4年以上ダイビングを続けていて、その間一度も見たことがなかったし、当時一般に出回っていたポータブルな魚図鑑には、このようなウツボなどどこにも載っていなかったのだ。

 ところがその後すぐに、実は珍しくもなんともない普通のウツボであることがわかってしまった(図鑑によっては稀種扱いだったりする)。

 白黒模様が目にも鮮やかなゼブラウツボは、普段ボートダイビングで我々が徘徊するような水深には住んでおらず、リーフ上やリーフ際の岩の割れ目など、狭苦しい場所を好むのだ。

 そのため、スノーケリングのお客さんを見ているときや、ターボスネイル生息密度調査をしているときなど、浅いところを泳いでいる際にはわりと出会える。

 冒頭の写真のようにジッと顔を見せてくれていることもあるけれど、意外に器用に隙間を縫ってスルスルと逃げ隠れしてしまうこともあり、体や尾ビレの先しか見えない…なんてこともある。

 特徴的なゼブラ模様は顔周辺だけではなく、全身まるごとシマウマさんだ。

 けっして珍しい魚という印象はないものの出会うケースが限られており、姿を見かけるときはゆっくり撮影できるような状況ではないため、出会っている回数の割に写真を残せていない。

 なので彼らの様子をつぶさに紹介することはできないのだけれど、ご注目いただきたいのは、ゼブラウツボのまん丸な顔の、ぬいぐるみのように見える質感。

 この丸い顔の奥に、蛇を思わせるような長いニョロニョロした体があるとはとても想像できない。

 性格もお顔のとおりで、口を開けて怒りをあらわにしているところなど見たことがない。

 彼を怒らせることができる人は、実生活でも相当周囲の人たちにウザがられているに違いない。