チヌマンの刺身

 チヌマンもしくはツノマンとは、テングハギのことである。
 リーフ際でも普通に群れているから、ダイバーなら目にしたことがある人も多いだろう。

 ところが、そんなにたくさんいるにもかかわらず、市場でお目にかかることは滅多に……いや、まずない。

 なぜか。

 …と訊かれて、県内在住のお魚好きお刺身好きの方は、

 「まずいから…」

 と応えるだろう。
 しかしそれは!!

 あまりにもチヌマンの実力を知らなすぎることによる。
 草食の魚はおしなべてそうなのかどうかはわからないけれど、この手の魚は少しでも鮮度が落ちると途端に匂いが鼻につくようになる。
 臭くなるのだ。

 いかな流通の世の中といえど、鮮度を保ったままこの魚を食卓、もしくは居酒屋のテーブルに供することはかなり難しい。

 そのため、この魚の評価は、鮮度が落ちた状態で測られることになる。

 その点、産地直送どころか産地そのものの島に住んでいると、海から上がったばかりのチヌマンをいただくことができる。
 このトレトレピチピチのチヌマンのお刺身ときたら……

 激うまッ!!

 特に冬は脂がノリノリで、腹側のお刺身なんて「これが白身のお刺身か!?」と驚くほどの食感&味になる。魚通と称する都会の人が目隠しをしてこの魚を食べたら、まず間違いなくこれがチヌマンであるとは気づかないだろう。
 いや、目隠しをせずとも、鮮度の高いこの魚は時間が経ったものとは全然違う色をしているから、ひょっとするとわからないかもしれない……。

 このチヌマンをいただける環境さえあれば、クロマグロなんぞ、どれだけ漁獲制限、輸入制限を設けられようと知ったこっちゃない。
 ああ、シアワセシアワセ………。

 生前のお姿

黒っぽいのはテングハギモドキで、白っぽいのがテングハギ。
けっこうな数で群れていることが多い。

 


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