写真・文/植田正恵

103.屋根が飛んだ日・3
月刊アクアネット2011年12月号

 

 風が多少収まった昼頃になって見に行った我が家は、外も中も、ゴジラがひと暴れして去り際に小便を掛けまくっていった、という有様だった。
 大震災の被災地で、被災家屋を見て呆然としている被災者が言う

 「どこから手をつけてよいのやら……」

 という気持ちが、今このときになってようやく理解できた。

 これが10月ぐらいの出来事だったら、ゆっくり片付けながら少しずつ、とのんびり構えられる。が、今はお盆商戦を間近に控えた8月真っ只中だ。連絡船が復旧し次第、ご予約をいただいているゲストが来島してくる。
 そんな我々にとって何よりも先に対処しなければならない問題はといえば、

 「どこで飲む?」

 この非常事態になにを呑気なことを…と呆れてはいけない。
 なにしろ当店のゲストときたら、「ダイビング<夜のゆんたくタイム」という傾向が顕著なのである。サービス業的には、いわば夜の酒こそが仕事の本番といっても過言ではない。
 その大事なゆんたくタイム用の場所が被災してしまって使用不能なのだから、これ以上の非常事態はない。

 ともかく、まずは連絡船復旧後3日間を臨時休業にして復旧作業にあてることにした。その3日間で生活必需品の救出と、別宅の「住居」への改造とダイビングサービスの機能の維持、そしてどう考えても仮設住宅には入りきらない物資の置き場の確保、などなどを同時に進行させなければならなかった。
 オーバーヒートで頭から火を噴きそうだったけれど、幸いなことに、屋根が飛んでしまったことにより丸2日間雨ざらしになっていた冷蔵庫、テレビ、パソコンその他数々の家電製品は、ダメもとで三日三晩クーラーに当て続けたり天日干しにしたりして乾燥させたら、一部を除いて見事に復活してくれた。
 製品本来の寿命は縮まったかもしれないにせよ、家電製品の意外な底力を知った。

 モンダイはゆんたく会場である。
 避難先の別宅には
20人くらいは集まれるデッキがありはするものの、なにぶん部落の中心地だから、毎夜のごとく夜12時過ぎまで大騒ぎをするわけにはいかない。
 うーん、うーん、他に場所は???

 そこで思いついたのが、雑貨屋さんの店舗を夜はゆんたく会場に、という作戦だ。
 従来のリビングで使っていたテーブルが、測ったように店内にスッポリ納まってくれたのである。酔っ払ったゲストが商品を壊してしまう…という危惧がありはしたものの、そのときは丸ごとお買い上げしていただくことにしよう。

 あれから早3ヶ月。
 夏の賑わいがあっという間に去り、そろそろ冬の気配すら感じられる季節になった。住人の私よりも家が壊れたことを悲しんでくれたり、空家を物置として借りられるよう算段してくれたり、繁忙期で忙しいのに、数日間食事を作って持ってきてくれたりと、島の方々には様々にお世話になりつつ、そして何もお返しできないにもかかわらず、友人知人ゲストを含めた関係各方面の方々から貴重なお志を頂戴したりしつつ、おかげさまで今シーズンを終えることができた。皆様に感謝!

 家を含め、今後どうするかという具体的なビジョンは今のところ何もないけれど、いたずらにこれからを心配するよりも、「なんとかなったらラッキーだもんね」なんていかにも南国風に考えながら、楽しかった思い出のある我が家を片付けていこうと思っている。