写真・文/植田正恵

106.学習発表会の一品料理
月刊アクアネット2012年3月号

 

 水納島の島民は、学校に通う児童・生徒が家庭にいるいないにかかわらず、自動的に水納小中学校のPTAのメンバーになる。

 けっして有名無実ではない。
 会費徴収は無論のこと、運動会やPTA総会などなど、実際に参加できる機会がいろいろある。

 そんな行事の一つが学習発表会(いわゆる学芸会)だ。
 学習の成果を発表するのはもちろん児童生徒だけではない。地域住民も舞台に立つことがあるし、婦人部の面々は、腕によりをかけた一品料理を、作品として発表するのが慣わしだ。

 学習発表会は1月の末に開催される。
 島で各家庭が作っている野菜の収穫期にあたるし、暇な時期なので海に行けば海の幸が採り放題だから、一品料理の材料には事欠かない。

 とれたてのものはただでさえ美味しいのに、それらを活かして各家庭秘伝のレシピで作られる一品料理となると最高のゼータク。
 そんな数々の料理を、夕刻から開催される反省会と称する飲み会でみんなでいただく。たまたま同じ料理になっていても、盛り付けや味が微妙に違っていて、それを食べ比べるのがまた面白い。

 島に越してきた当初は、学習発表会のたびにただ驚き感動していた。
 なにしろおでんにレタスが入っていたり、ヒザラガイという海岸にいるゲテモノ系生き物の炒め物があったりして、それまでの半生でまったく想像だにできなかった料理だらけだったのだ。

 やがてカルチャーショック(?)に慣れるとともに、逆に水納島にはないレシピを私が紹介しようと思い至った。
 これまでに、アヒルの胸肉のたたき、京都風お雑煮、各種パスタ(なぜか「パスタは外食」と思い込んでいる人が多い)、自家製燻製などを発表してきた。

 面白いことに、味覚に関しては保守的かと思われたおばあたちも、見慣れない料理にチャレンジしてくれる。そして宴席で食べてみた後に、どうやって作るのか、と興味津々の様子で訊ねられることもしばしばだ。
 きっと忘れちゃうよな…と思いつつも、説明についつい熱が入ってしまうのだった。

 反省会に限らず、島のちょっとした飲み会で誰かが一品を持ち寄る機会は多々ある。
 なにげない宴席でも思いがけないヒット賞的料理にあたることもあり、そんなときは我がレシピに加えるべく、作者に根掘り葉掘り作り方を訊ねる。家庭単位の文化交流だ。

 そういう意味では学習発表会での一品料理展示は、まさに「学習」を発表する場といえる。
 スーパーどころか商店すらない島なので、作品はなるべく「そのときに手にはいるもの」で作らなければならないし、集まる人数に応じた量にしなければならないし、展示後に食べることになるため、作りたてじゃなくても美味しく食べられるものにしなければならないし、かぶらないようなるべく他の人と違うものを作らなければならないし………などなど、けっこう頭を使うのだ。
 そのためそれぞれの料理には、作者の人となりが表れているともいえる。

 そんな料理がズラリと揃っているのだから、学習発表会の「反省会」がいかにゼータクなものかお分かりいただけよう。

 仕出しのオードブルを揃えるのが恒例の普段の宴席と比べ、「やはりこういう料理がいいですねぇ…」と校長先生が舌鼓を打ちながらしみじみおっしゃっていた。

 作り手側は面倒くさいかもしれないけれど、この貴重な「文化」は是非今後も続いてほしい。