写真・文/植田正恵

112.台風の後片付け
月刊アクアネット2012年9月号

 

 観光業で成り立っている水納島は、夏ともなればトップシーズン、「今働かずにいつ働く」という季節だ。

 とはいえ来る日も来る日も休みなしで働いていると、収入なんてどうでもいいから休息日が欲しい!と願いつつ、遠い空を見上げているのもまた事実。

 するとそこはそれ、よくできたもので、そういうときを見計らったかのように台風が接近、否応なく休息日をもたらしてくれる。疲れきった体には、何にも勝る恵みの台風だ………と、当初は思っていた。

 沖縄近辺を通過する夏の台風はたいてい動きが遅く、迷走することもざらで、連絡船が5日間欠航ということもままある。
 そんなときは普段出来ない草刈りや部屋の片付けといった作業のほか、昼間からビールを飲んで読書や映画鑑賞など、それなりに充実した日々を過ごすことが出来る。台風休みはバラ色だ!!

 ただしそれは、暴風域に入らなかったら、という条件付きだった。暴風域に入る恐れがあると、その対策は強風域程度で済む台風とは格段に違ってくる。
 停電になったら冷蔵庫は開けられなくなるし、窓は開けられないのにクーラーも扇風機も動かない。そのうえ場合によっては屋根すら吹き飛ぶのだから、骨休みなどといってのんびりしている場合ではなくなってしまう。

 それでも台風通過後のことを思えば、暴風域に入っている最中はまだ楽なのかもしれない。なんといっても大変なのが、台風通過後の片づけなのだ。

 暴風域に巻き込まれた島の中は、道という道にものすごい数の木々の枝葉が、いや、場合によっては幹ごと落ちている。
 海水浴場に目を転ずれば、信じられないくらいに大量の海藻、ゴミ、その他もろもろが打ちあがっている。
 桟橋上には、四輪駆動車じゃなければとても行き来できないくらいに砂が堆積している。

 季節はハイシーズン。連絡船が運航を再開すると、容赦なく海水浴客がわんさか訪れてしまう。そのため連絡船が復旧する前に、人や車が通れるように各道を開通させ、なおかつ清掃作業を終えておかなければならない。

 ところが桟橋にしろ海岸にしろ、普段は「管理者」として口うるさいことばかりいう県の行政は、そういう時にはまったく何もしてはくれない。
 シーズン中はドドッと島に押し寄せてくる日帰り業者のみなさんも、当然ながら台風中は島にはいない。
 連絡船は避難しているので、船員さんたちもいない。
 台風後のあれやそれやの後片付け作業は、島の各家も似たような惨状であるにも関わらず、すべて数少ない島民で行わなければならないのである。

 自分たちが暮らしている以上、そこの清掃作業をするのは当然だということは理性で納得してはいる。しかしそうして後片付けが終わったあと、連絡船が復活してからナニゴトもなかったように営業だけをしに来る島外日帰り業者を見ていると、なんともやりきれない理不尽さを感じるのだった。

 人口30名足らずの島に各種行政サービスがあったり、立派な小中学校があったりすると、ヒトはえてして「税金の無駄」と思うことだろう。
 けれどこの島に人が暮らしているからこそ、台風の後でも海水浴客が快く島に滞在することができているのである。
 少なくとも、台風後の島内後片付け作業には、税金は1円も使われてはいない。