写真・文/植田正恵 |
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113.男の出番!?草刈り機 月刊アクアネット2012年10月号 |
まだ島に越してくる前、放浪のダイビング主婦だった頃、沖縄の離島で研究を続けている友人の家にしばらく滞在したことがあった。 彼女はイリオモテヤマネコの研究をしていて、毎日それなりに忙しくしているのだが、そんな日々の合間に借家の庭の草刈りをやらなければならないという。 沖縄は亜熱帯の気候なので、冬でも雑草が枯れない。 それは水納島に引っ越してきて、すぐに思い知らされた。 街で暮らしていると、よほど広い土地を所有しているわけではないかぎり、草刈り機を必要とすることはほとんどない。 ところが水納島では、大阪におけるたこ焼き器なみに、草刈り機がほぼ各家に1台当たり前にある。 島に越してきた当初はそれを知ってたいそう驚いたものだった。 その後手作業では埒があかないことを体で覚えたので、とうとう我が家も草刈り機を購入することになった。 野菜作りを趣味にしている私も、畑の草刈りは自分でやっている。購入したばかりの頃、やりたがり的うれしさ半分でさっそく畑で草刈り機を使っていると、通りかかったおじいやおばあが怪訝そうな顔で「だんなさんはやってくれないの?」と聞いてきた。 不思議なことに島の中では、草刈り機を使うのは男の仕事という認識があるからだ。 …といいつつ、とかく細かく根気のいる作業は女性陣が頑張っているわけで、それに比べると労力的には遥かに楽にもかかわらず、「草刈り機は男の出番!」とばかりに、各自が一家に一台ある伝家の宝刀(?)を持参して共同作業にいそしむ男性たち。 ひょっとしたら水納島だけかもしれないそんな光景が、私は大好きなのだった。 |