写真・文/植田正恵

122.読み聞かせ
月刊アクアネット2013年7月号

 

 昨年4月のある日、水納小中学校の先生がやってきて、「頼み事があるんですけど‥‥」と、言いづらそうにもじもじしていたことがあった。

 昔ならいざ知らず、近頃では珍しいことなのでやや身構えていると、件の先生は日程表を広げ、

 「読み聞かせをやっていただけないかなと思いまして…」

 と言った。

 私が小中学生だった頃、「読み聞かせ」なるものを学校でやった記憶はない。
 けれど水納小中学校では数年前から、週に
1度始業時間前にPTAや先生方その他の人々が児童生徒たちに本を読んで聞かせる時間があるということは聞いていた。

 漠然としたイメージしか持っていなかったにもかかわらず、やりたがりの私としては1度やってみたいと思っていたので、

 「はいはい!やります、やらせて下さい!」

 というくらいのお申し出だった。

 通年やっている「読み聞かせ」ではあるけれど、シーズン中はとてもじゃないけどそんな時間に本など読んでいられない。なのでオフシーズンの暇な時期に2回ほど順番に入れてもらった。

 そのオフシーズンがやってきて、具体的にどうやるのかまったく未知数だったので、まずは現場を見学してみた。
 すると、持ち時間
15分の間に読み聞かせる本の選択は自由で、立って読もうが座って読もうがお好きなように、というとてもゆるーい感じだった。

 問題はむしろ聞く側で、児童生徒が小学2年生から中学2年生までと年齢の幅が広く、加えて児童生徒よりも人数が多い先生方もいる。
 もちろんそこで先生向けにする必要はまったくないわけだけれど、それはそれでつまんないし……。

 考えた結果、1回目は中学生のときに衝撃を受けた、宮沢賢治の「注文の多い料理店」を、2回目のときは小学生のときにお気に入りだった「長靴下のピッピ」を選んでみた。
 多読もいいけど「心に残る
1冊」というのも大切だと思う、そういうものに出会えたらいいね、という思いも込めて、自分が大好きな本を2冊紹介してみたのだけれど、伝わったかな?

 ま、ギャラリーの感想はどうあれ、個人的には他所ではなかなか出来ない経験をしただけでも良かったと思っている。

 その後実家に帰省した際に聞いてみたところ、やはり埼玉でも学校で読み聞かせをやっていて、読み聞かせラブ♪みたいな人がボランテイアでやってくれるのだそうだ。

 家庭の事情にもよるだろうけれど、昔は夜寝る前などに絵本や昔話を親もしくはおばあちゃんあたりが枕元で聞かせてくれるものが「読み聞かせ」のようなものだった。
 ところが今は両親が共働きで忙しく、しかも核家族が普通だから、家庭では読み聞かせどころではないに違いない。

 だからこそ家庭の代わりに学校がそれを担っているのだろう。読書離れが叫ばれる昨今、読書の効用は今さら言うを俟たないから奨励したい気持ちはわかる。

 そうはいっても、「本を読みましょう!」といいながら、一方では小学校のうちから英語を学習しましょう!ともいう学校である。
 子供たちはただでさえ子供のうちにしかできないいろんなことで忙しいというのに、あれやこれやそれやといろいろとやらなければならないことが増えてしまったら、読書を「趣味」にする時間すら無くなりはしまいか。

 仕事が忙しくて近頃めっきり読書の時間が減ってしまった、なんてことは、世の多くの大人が味わっているはずなのに……。