写真・文/植田正恵

138.見えないデスクワーク
月刊アクアネット2014年11月号

 

 私はじっと座って仕事をするのが苦手だ。いわゆるデスクワークである。

 水族館に勤めていたときも、水槽の掃除や給餌は嬉々としてやるのに、飼育日誌を書くために机についた途端、睡魔が襲ってきて機能停止ということがよくあった。
 この原稿を書いている時など、首がもげそうなほどにカクンと90度下に落ちることもしばしばだ。

 水納島では仕事が仕事だけに屋外で体を動かすことが多く、越してきた当初はまさに天職!と喜んでいた。
 ところが冬場は完全にオフにしているので、天気や海況がいいときに海に行く以外体を動かすことがあまりない。
 夏の間に撮った水中写真の整理や会計処理等のデスクワークをする時間が持てる貴重なオフなのだが、そればかり5ヶ月間も続けるのはやはりつらいものがある。

 そこで始めたのが庭仕事と畑仕事だ。

 越してきたばかりの頃の我が家の庭は、庭というよりは原野といったほうがいいくらいに荒れ放題だった。
 沖縄では冬でも雑草が枯れないため、少しでも放っておくとたちまち雑草に覆われてしまうのである。放置期間が長くなればなるほど、手のつけようがないほどの藪と化してしまうのだ。

 なので当初は必要に迫られて草刈りを始めた。
 とはいえ草を刈るだけじゃつまらない。どうせならハーブメインの花壇をつくり、果実のなる木を植え、庭一面芝生にしよう!と野望は膨らみ、いつしか庭仕事をせっせとするようになった。

 

  その一方で、おばあたちからおりにふれいただく採れ採れの野菜があまりにも美味しいので、ここはひとつ自分で作って美味しい野菜を食べ放題状態にしようと思い立ち、三〇坪ほどの畑を借りて野菜作りを始めた。
 ようするに食いしん坊な人間の完全な趣味の世界である。

 そんな趣味の世界なのに、庭仕事や畑仕事をしていると、傍から見ているヒトには額に汗して頑張っているように見えるらしい。
 いつしか島の人にとっては、

 「夏も働いて冬も働いている働き者の正恵さん」

 というイメージが出来あがってしまった。
 

 それで割を食っているのがだんなだ。
 私がそうやって趣味をエンジョイしている間、写真撮影を含めた通販サイトの運営やダイビングサイトのなんやかんやをあれこれパソコンで作業している、すなわち「仕事」をしているにもかかわらず、島の人たちにはその働いている姿が見えないので、

 「正恵にばかり働かしている怠け者のだんなさん」

 のイメージが出来あがり、なんともかわいそうな状態になってしまったのだ。

 島の人たちにとって、「働く」というのはすなわち屋外における肉体作業のことなのである。
 私同様デスクワークはみんな苦手なはずなんだけど、そもそもデスクワークという概念が無いに等しいから、屋内にいるイコール働いていない、という図式が成り立ってしまう。

 だからパソコンの前に座ってどんなに一生懸命「仕事」をしていても、ゲームでもやってんの?くらいの感覚にとられてしまうことになる。そのため私が「趣味」の畑仕事をしていると、「だんなさんは手伝ってくれないの?」と尋ねられてしまうのだ。

 その都度、「これはあくまでも私の趣味であり遊んでいるのであって、だんなは家で仕事をしているんですよ」と説明するのだけれど、フィールドワーカーの島人たちには、いまひとつ理解されていないようなのだった。