写真・文/植田正恵

15.沖縄ライフ
月刊アクアネット2004年8月号

 夏真っ盛りである。
 朝目覚めればセミの大合唱、朝8時を過ぎれば強烈な日差しが肌を焼き始める。
 気温は連日30度を超え、いわゆる熱帯夜と呼ばれる日々がずーっと続く。

 コンクリートやアスファルトに囲まれた都会でも、連日うだるような暑さになっていることだろう。本土でもこれだったら、南国の沖縄なんてさぞかし過ごしにくい日々が続いていると思われるかもしれない。

 ところが、意外に夏の沖縄は涼しい。
 たしかに日差しは殺人的に強烈だけれど、日陰にいるだけで別世界だし、風が通ると天国のような心地よさ。
 そのうえ海に浸かっていると、夏の暑さを忘れてしまいそうになるほどだ。
 猛暑が続く本土からいらっしゃるゲストの多くは、沖縄のほうが涼しいことに驚かれる。

 そんな夏場、海から帰ってくると、ときどき島のおじいやおばあが我が庭のモモタマナの木陰で涼んでいることがある。

 夏らしい南西の風が吹いていると、島の中心にあるおじいやおばあの家には風がなかなか通らないのとは逆に、海辺にある我が家のモモタマナの木陰は風通しがよくなるのだ。

 これが南風だと、集落の中心にあるアカギの木の下がおじいやおばあの憩いの場所になっている。
 暑いところで暮らしている人々は、暑いときの快適な過ごし方を自然に身に着けているのだ。

 越してきたばかりの頃、突然朝7時ごろに共同作業開始の電話がかかってきたりすると、何でまたこんなに早い時間から…と、ちょっとムッとしたことがたびたびあった。

 逆に、用があってお昼過ぎに誰かのうちを訪ねると、たいていみんな昼寝をしていて、出直して夕方に行くと誰もいなかったりした。

 当時はいったいどういうことなのかよく分からなかったのだけれど、さすがに10年も住んでいるとみんなのライフスタイルが分かってきた。
 つまり、自分のペースで仕事ができる彼らは、基本的に夜が明けたら動き出し、涼しいうちに一仕事をして、お昼ご飯のあとの一番暑い時間帯はをお昼寝休憩に。
 そして涼しくなってから再び動き出し、日が暮れると家に帰るのである。

 海に獲物を取りに行くときは、潮の満ち干が関係するので必ずしもこのとおりにはならないけれど…。

 それを理解してからは、みんなの行動がいちいち納得できるようになった。
 夏の7時は、本土にいた頃の我々の9時10時ぐらいの感覚だったのだ。

 そして朝ひと仕事を終えたあとの、昼食後の午睡を含む長時間休憩は、東南アジア方面の暑い地方の一般的なライフスタイルと同様で、スペインなどのシエスタの風習の由来もその辺りにあるらしい。

 最近では私もみんなのライフスタイルを真似て、外仕事はなるべく朝夕の涼しいときにやっている。
 そしていつのまにか目覚し時計を使わずとも明るくなれば起きられるようになってしまった。

 それはただ単に加齢によるものなのかもしれないけれど、そうしたらすこぶる健康的で、ここ何年か風邪すらひいていない。

 ただ、その横で「そんなの当たり前じゃん」という顔をしてのんびりアヒルが歩いているのがちょっと悔しい。
 夏の暑い午後、我が家の庭で一番涼しいところを占領しているのは、ほかならぬアヒルたちなのだった。