写真・文/植田正恵

151.ガメラ105号のお散歩
月刊アクアネット2015年12月号

 我が家には現在ケヅメリクガメもいる。
 その名をガメラ
105号という。
 事情により飼いきれなくなった前飼い主のもとから我が家に来て、かれこれ4年の月日が流れた。

 ケヅメリクガメは、ガラパゴスゾウガメ、アルダブラソウガメに次いで世界で3番目に大きくなるリクガメの一種。ペットショップではピンポン玉サイズのものが売られているけれど、うちに来た時点でガメラ君はすでに齢15、体長60pを越える巨大さだった。そして現在、体長は70センチほどになっている。

 そんな彼の近頃の日課は、お散歩。
 飼育ケージの扉を開けるとノソノソと外に出てきて、ひとしきり庭のチェックをしたあと敷地外へと旅立つ。
 そして毎度おなじみのコースを歩き、途中文字どおり道草を食べながら、
30分ほどすると敷地内に戻ってくる。

 もちろん勝手に1人でどこかへ行くわけではない。 
 かといってリードをつけてコントロールするわけでもない。
 よそ様の敷地内や畑を歩き回らせるわけにはいかないので、付添うだんな(散歩担当)があれやこれやと微妙にコントロールしつつ(ダメというとわかるようになってきたらしい…)、それでもおおむねガメラ君の歩きたいように歩いてもらう、というスタイルだ。

 今でこそこのような散歩のルールができているけれど、当初はすったもんだで大変だった。
 歩いた先でどうにも引き返せなくなって軽トラに積んで戻ったり、果てなく歩いて海岸までたどり着いたり、そろそろ時間的に限界だから帰ろうとしているのに、まったく違う方向に行こうとしたり…。


 それがいつの間にか、ルーティンコースをガメラ君が自分で確立した。たまに2時間散歩してヘトヘトになるよりは、たとえ30分でも毎日のほうがいいらしく、わりと毎日散歩できるとわかったからなのか、一度の散歩を腹八分目で終えるワザを身に付けたようだ。

 30分とはいえさすがに繁忙期にそんな遊びをしているヒマはないけれど、シーズンオフや閑散期なら、お天気と都合が許す限り毎日のように散歩しているので、ガメラ君にとってもいつしか散歩は「当然のこと」になっている。
 そのため散歩の時間になると「出せ、出せー!」とばかりに柵の中で暴れる始末。好天続きにもかかわらず散歩できない日が数日続こうものなら、小屋の中で恨めし気な顔をこちらに向けて拗ねてしまうほどだ。
 知能的にはどうやら人間の
2歳児程度らしいから、拗ね方もわかりやすい。

 島の人たちにとって巨大なカメの散歩なんて、散歩させているヒトも含め、当初は奇異以外のナニモノでもなかった。
 それが今ではすっかり島の「日常」の景色になっている。

 とはいえたまたま居合わせた旅行者にはやはり衝撃は大きいようで、遠目に通りかかってから、我が目を疑うかのごとく後戻りして二度見をする方も多いし、「ギョエッ!?」という声にならない叫び声もすでに何度も耳にした。

 今の世の中のこと、そうなるとたいていの場合スマホで激写ということになる。
 沖縄の小さな離島でケヅメリクガメを撮ってどうするの?と思わなくもないけれど、なかなか絵になる島のワンシーンであることは間違いない(稀に島の野生のカメと思い込む方有り)。

 仕方なく引き取ったも同然だったガメラ君も、今やこうしてれっきとした水納島の風物になっているのであった。