写真・文/植田正恵

152.離島とネット通販
月刊アクアネット2016年1月号

 10年くらい前からとんぼ玉と呼ばれるガラス工芸を始めた私は、ダイビングサービスのかたわら経営している雑貨屋さんの店舗で作品を販売している。

 とんぼ玉は様々な色のガラスの棒をバーナーで溶かしながら作っていくもので、できあがった玉を使っていろいろなアクセサリーを作っている。
 もちろんその材料となるガラス棒や、アクセサリーを作る際に必要なパーツなどは、島内で手に入れることは不可能だ。
 そこで仕方なく苦手なパソコンを利用し、ネット通販で購入している。

 辺鄙な離島に居ながらにして、希望するほぼ全てのモノをポチッとするだけで数日後には手に入れることができるなんて、島に越してきたばかりの20年前には想像すらできなかった便利さだ。

 さすがに私が住んでいるような僻地では不可能ながら、一部の都会では、午前中に注文すればその日のうちに商品が届くことも珍しくないという。
 
 そんな時代だからか、当店のネット通販のご注文で、配達希望日が翌日になっていることがたまにある。
 思わず心の中で「無理ですから!」とツッコミを入れてしまうことをお許しくださいお客様。

 当店ウェブサイト上で、配達希望日は注文日から少なくとも一週間の猶予をみてくださいと一応説明しているのだけれど、注文した商品がその日に届く社会にお住まいの方々には見当もつかない不便さなのだろう。

 配送が連絡船の運航に左右されるため、新聞ですら早くてその日の昼前にしか届かない水納島に住んでいると、届くと聞いていた日に品物が届かないのは日常茶飯事だし、時化のせいで連絡船が欠航してしまい、2日前に届くはずだった生鮮食品が遅れて届いた頃にはギリギリアウトだった、などは普通によくあることなので(3日遅れて届いた活け車えびがピンピンしていたのには驚いた)、多少配達が遅れたからといって目くじら立てて怒る島民はいない。

 ところが今年、新聞の購読者用お知らせに、

 「台風のときは商品の配達が遅れることがあります。ご了承ください」

 なんて文言が入っているのを初めて目にした。
 そんな当たり前のことをなにをいまさら。

 しかし考えてみると、便利な都会からの移住者が昔に比べて増えている沖縄県のこと、遅配に対する憤慨クレームがかなり増えているためかもしれない。

 商店一つない辺鄙な島にいながらにして様々なものを手に入れられる便利さを思えば、多少遅れて配達されようとも日本の配送システムってえらい!と手放しでほめたくなるほどである。
 ダイビングと雑貨屋さんを生業としているがために、あまり一般的ではない品物を必要とする人間にとっては、何度も言うけれど感動ものですらある。

 そんな私にとって何にも増してうれしいのは、各地の美味しい地酒を、島にいながらにして選りどりみどりで手に入れることができるようになったこと。
 1本でも6本でも送料は同じというから、調子に乗って毎度6本ずつ、オフの間に3回ほど注文しているワタシである。酒専用の冷蔵庫を開けるだけで、酒は七色人生バラ色の日々…。

 あまりの注文量の多さに、先方からは飲み屋と思われているに違いない、ダイビングサービス&雑貨屋さんなのであった。