写真・文/植田正恵

159.大病記・(中)
月刊アクアネット2016年8月号

 人生初の大病を患いつつもその後は無事にシーズンを終え、これから薔薇色のオフシーズン!

 ……になるはずが、初めて受けた乳がん検診で引っかかってしまった。

 引っかかったといっても、再検査をすれば実はなんてことはなかった…というモノではなく、最初からビンゴ!気味になんだかんだと検査に次ぐ検査のあげく、乳がん確定、それでも当初は部分切除で済みそうな話だったのが、あれよあれよという間に全摘手術に決定。

 もっとも、治療法については病院や先生によっていろいろあるようで、近頃流行りのセカンドオピニオンの仕組みを使って、健康保険の適用が無い先進医療を含めた最良の方法を選択する、という治療の受け方もあるようだ。

 でもなんといってもここは沖縄、しかも僻地、加えて貧乏。
 最良の方法もなにも、そもそも選択の余地はほとんどないといっていい。
 であれば、せっかくオフシーズン早々に発見できたのだから、サッと手術を済ませてパッパッと復活、ということにしなければ、
4月から始まる次のシーズンの開幕に間に合わなくなってしまう。

 なのでとにかく最速で済むよう患者の私としては頑張るのだけど、近頃は芸能人が闘病を告白すると同時に早期発見の重要性を訴えてくれるものだから、ただでさえ少ない病院に我も我もと検査を受ける人が殺到していて、検査の予約をするだけでもままならず、手術となろうものなら当分先まで空きがないなどという始末。

 もともと乳がんは、タチが悪い代わりに進行は遅いタイプのものが多いため、センセイもいたってのんびりしている。
 こちらとしては今出来ることはすぐにでも、という気でいるというのに、

 「この検査は次回でもいいですよぉ」

 という具合だ。
 でもシーズンに間に合わせたいという当方の切羽詰った事情をようやく理解してくれたのか、那覇近郊の大きな病院で手術を行うよう紹介していただき、
1月中にできるようなんとか話がまとまった。

 11月に発見されていながら、最速の最速で手術は1月。
 それでもたいがい遅いだろ…と思っていたのだけれど、病院でいろいろお聞きしたところによると、私のような場合なら、家族を交えて手術方法を含めて数ヶ月くらい吟味に吟味を尽くし、早くて
4月くらいにようやく手術の方針が決まるのがフツーだという。みなさんなんて気が長いんだろう……。

 ともかくそんなわけでようやくあとは手術を待つばかり…になったのかと思いきや、主治医がCT画像のリンパ節あたりが気になるといい、「もしここに転移していたら手術はキャンセルで、まずは化学療法からになります」というではないか。
 またまた検査である。

 転移が見つかれば手術どころではなくなり、もちろん来シーズンの仕事どころでもなくなる。
 その結果がわかるのは、くしくもクリスマス。
 ところが例によって時化模様で、当日の欠航が予想されるため前日からの本島泊を余儀なくされ、那覇近郊の病院なので当日も最終便には間に合わず。検査結果を聞くためだけに、なんと2泊3日を要してしまう。

 なんだか病気そのものや検査による体のダメージより、連絡船の運航状況の確認から始まる通院するためのモロモロのことや、自宅にいられないことによって生ずる仕事の停滞がもたらす精神的ストレスによるダメージが大きかった。

 こんな思いをするくらいなら、いっそ治療するのをやめちゃおうかな、なんて考えが浮かんでは消え、再び浮かぶ師走を過ごしていた私である。 

                   (つづく)