写真・文/植田正恵

170.ビーチボーイ&ガール

月刊アクアネット2017年7月号

 遅くとも6月下旬には梅雨明けする沖縄は、いよいよ夏本番を迎える。
 夏休みともなれば、人口
50人に満たない小さな水納島に、連日500人以上もの日帰り観光客が押し寄せることになる。

 そんな海水浴客を当て込んだ海の家が島の主要観光産業のひとつなのだけど、飲食店から各種海のレンタル、安全監視員などなど来島者の様々なニーズに応えるためには、高齢化驀進中の島民だけでは当然ながら手が足りない。
 
 そこで毎年夏場の季節労働者として、ビーチボーイ&ガールが島にやってくる。

 夏休み限定のビーチボーイといえば、一昔前なら大学生のアルバイトというイメージがあった。
 しかし
4月に海開きがあり、10月一杯まで海水浴場がオープンしている亜熱帯の海水浴場では、夏休み限定の人材だけでは事足りなくなる。

 とはいえ冬場は仕事が無いから、1年を通じて働けるわけではない。
 そんな前途あやふやな仕事にシーズンを通して就いてくれる人材を求めるのはなかなかキビシイものがあり、応募者それぞれの就業可能期間をやりくりしつつ、シーズン中に必要な人員を確保していた海の家だった。

 ところが最近、傍から見ていると、少しばかり様子が違っているように見える。

 歓楽街とは無縁、ショッピングも不可能、娯楽施設皆無という小さな島で、おまけに休日もきっちり保証されているわけではない労働環境でありながら、それなりに島の生活が気に入り、仕事もテキパキこなしつつ、島民生活を楽しんでいる若者たちが増えているのだ。
 本来ならマットウな社会に出ているはずの
2030代の若者たちが、一度定職に就いたことがあるヒトもないヒトも、海の家の人材募集に応じてくるのである。

 そして夏場の半年あまりをビーチボーイ&ガールとしてしっかり稼ぎ、それを元手に冬場は旅費が安く済む諸外国へ旅行などして優雅に過ごし、翌シーズンには再びビーチで働く、というスタイルを確立しているようでもある。
 あまりの僻地感に苛まれ、長く続かない子の方が多かった昔とは異なり、稼ぐ時期と遊ぶ時期にメリハリを儲けている彼らにとって、島に居さえすれば食住完備で無駄なお金は一切使う必要がない暮らしは、むしろ願ったりかなったりということなのだろう。

 一方で学校行事や各種イベントなどの島内の働き手兼参加者としても役に立ってくれるしにぎやかになるから、彼らの存在は高齢化驀進中の島民にとって有難くもある。

 このような若い間だけ可能な、ある意味刹那的な生き方をしていたら、将来きっと苦労することになるよ…と昔のヒトなら言いたくなるかもしれない。
 しかし、だからといって新卒採用でマットウな職に就いたほうが将来のシアワセが約束されているだなんて、今の日本でいったい誰が確言できるだろうか。

 かくいう私はどちらかというと古い人間なので、吹けば飛ぶような店で毎年毎年コツコツ地道に働いてはいる。
 とはいえ毎年のように海外旅行に繰り出せるわけじゃなし、働けど働けど我が暮らし楽にならず、ジッと手を見ている…間に、ビーチボーイたちは優雅に旅行をしているのであった。

 うーむ……なんだか理不尽なり。