写真・文/植田正恵

189.島とうがらし
月刊アクアネット2019年2月号

 島らっきょう、島にんじん、島だこ、島バナナなど、沖縄には「島」とつく食べ物が数多い。

 島とうがらしもそのひとつ。

 ひとつひとつの実は3センチほどと小粒ながら、鷹の爪など目じゃないほどに激辛なとうがらしだ。

 見るだけで汗が出るほど激辛が苦手な私は、料理に使うことは一切ないにもかかわらず、我が家の庭のハーブ園にこの島とうがらしも植えている。
 いわば南国沖縄を演出するためで、赤い実がたくさんついていれば、島とうがらしをご存知のお客様がきっと

「おっ?」

 と思ってくださることだろう。

 そんな軽い気持ちで植えた島とうがらし、島とつくからてっきり沖縄在来の品種かと思っていたら、本名はキダチトウガラシというアマゾン川流域が原産の多年草の一品種なのだそうだ。

 どういうルートで沖縄にたどり着いたのかは知らないけれど、今では世界の暖かい地方に広く分布しており、タバスコもキダチトウガラシの一種が材料だという。

 タバスコが瓶詰めの調味料として有名なように、島とうがらしももっぱら瓶に詰められた調味料としての姿がおなじみだ。

 その名をコーレーグースという。

 10個前後の実を泡盛に漬けたもので、もちろんのこと激辛調味料である。
 ひょっとすると、島とうがらしは知らないけれどコーレーグースは知っているという観光客もいらっしゃるかもしれないほどに、沖縄そば屋や食堂では卓上調味料として欠かすことのできない存在でもある。

  ひと昔前ならそれらはどこも自家製だったのに、空前の沖縄ブームとなっている今では各種商品も豊富で、市販のものを置いているところも増えている。

 それどころか巷では原料の島とうがらしが不足しているそうで、コーレーグースは慢性的な品不足なのだという。
 島とうがらし自体も高値で取引されているらしい。

  そんなおり、昨春庭に植えた演出用島とうがらしが、鈴生りと言っていいほどの大量の実をつけた。

 かつて何度か挑戦したことはあるものの、こんなにたくさん実をつけたことは一度もなく、育てるうえで特別なことは何もしていないのにこの成果。
 ひょっとすると、昨秋の爆裂台風で死を覚悟した島とうがらしが、今のうちにとばかりに子孫を残すべく頑張ったのかもしれない。

 そんな鈴生り島とうがらし、だんだん熟れて赤くなると、葉の緑に映えて目立つものだから、熟れる前はほとんど誰も気づいていなかったにもかかわらず、島内の激辛好きの方々の羨望のマナザシが…。

  泡盛に漬ければ長期保存も可能だから、すべての実を無駄にせずに消費することも可能だ。
 けれど食材としての島とうがらしにまったく執着のない私は、島のみなさんに好きなだけ採っていい宣言をした。

 なかには沖縄そばを食べる際に出汁の味がほぼコーレーグースになるほど大量にかけるという人もいるくらいだから(度数30度の泡盛で作っている調味料を大量にかけて汁まで飲み干したら、酒気帯び運転にならないんだろうか)、激辛ラブな方々にはかなり喜ばれた。

  こんなにたくさん採れるなら、もっとたくさん植えて出荷すればいいのに、という方もいらっしゃる。
 でもそうすると逆に島とうがらしは危機を感じることがなくなり、大して実をつけなくなりそうな気もする。

 ナニゴトも欲をかくとうまくいかないもの。
 私にとって島とうがらしは、緑に映える赤い実をつける可愛い庭木のままでいい。