写真・文/植田正恵 |
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23.郵便配達は一度もベルを鳴らさない 月刊アクアネット2005年4月号 |
海辺のリゾートでの過ごし方のひとつに、日中思いっきり海で遊んで早めのシャワーを浴び、現地で手に入れたポストカードに便りを書きながらのんびりする、というのがある。 たしかに水納島でもそんな風に楽しんでいる方を見かけることがある。 かつては機能しているポストが集落の中心にひとつだけあった。あまり利用されてはいなかったものの、そのポストに投函された手紙は、日曜日と連絡船が欠航した日以外は、毎日連絡船で通ってくる郵便屋さんによって、きちんと回収されていた。 ところが何年か前、老朽化が激しくなったポストは、新しくされるのではなく撤去されてしまった。
郵便配達はどうなっているのかというと、郵便局を引退して水納島専属になった郵便屋さんが、朝本島の郵便局に寄って水納島配達分を受け取り、本島発第一便の連絡船に乗って来島、各家庭を回って再び連絡船に乗って帰って行く、というシステムになっている。 ただ、配達するものがないとそれぞれの家庭には来ないので、郵便ポストがなくなってしまった現在、発送したい郵便物がある時には、帰りの船に乗る郵便屋さんに手渡さなければならない。 これには正直かなり驚いた。 そういえば中越大震災の被災地の様子を伝えるニュースで、避難先での配達は大変かという周囲の心配をよそに、名前と顔が一致しているから困らない、と郵便屋さんがコメントしていた。 水納島担当の郵便屋さんは、私が引っ越してきてから10年間変わっていない。
でも郵便オジイは、時間があるときは島で釣りや読書などなど、余暇を楽しむノリで気軽に仕事をしてくれている。 でも民営化を唱える方々の中に、こういった田舎の郵便事情にまで思いをめぐらせている人が、はたしてどれだけいるのだろうか…。 |