写真・文/植田正恵

37.ギンネムとの戦い
月刊アクアネット2006年6月号

 若々しい新緑を愛でていた季節が過ぎ、今度は伸びすぎた雑草や木々の枝がだんだん気になる季節になってきた。
 冬の間は数々の野菜が育っていた畑も、そのほとんどが雑草に覆い尽くされてしまう。
 そもそも夏の暑い間は畑仕事なんてする気にならないし、観光業のほうが忙しくて手がまわらないのだ。
 だからだいたい5月半ばから9月末くらいまで、畑は雑草の天国になる。そして9月末になって時間ができ、そろそろ冬の畑仕事に備えて草を刈ろうとする頃には、そこがかつて畑だったとはとうてい思えないほどの草原になっている。
 水納島で牛草と呼んでいる3mにもなるイネ科の雑草が生えていようものなら、根から掘り起こして捨てに行かないと、茎の節々や地下に残った根から、あっという間に新芽が出てきてえらいことになってしまう。 

  たかが4ヶ月でこのありさまだ。
 ものなりが良い亜熱帯の気候は、雑草との戦いでもある。なにしろ冬になったからといって、枯れることがないのだから。これが1年、2年となると、草原ではなく雑木林の山のようにすらなってくる。
 その原因のひとつがギンネムである。

 ギンネムはもともと沖縄には自生しておらず、明治期に畑の緑肥用としてスリランカから移入されたのが始まりで、戦後、焦土と化した本島の緑化のため、さらにハワイ産のものが大量に移植されたという。
 マメ科の植物で、ポンポンのようなかわいらしい花が咲き、さやの中に種ができる。それを小豆の代わりに使ってお手玉を作ることもできる、かわいい種だ。
 これが台風の時に風で運ばれて辺りに散らばると、あっという間に芽吹き、1年後には幹の太さが直径2cm、高さ2mくらいの若木に成長してしまう。こうなると簡単に手作業で抜くことができず、根元で切り倒してもすぐまた新しい枝葉が伸びてきてしまうやっかいものになってしまうのだ。

 いくら台風の風がすごいといっても、本島から7km離れた水納島には、さすがにギンネムは広がらなかった。
 ところが昔、ギンネムの葉が豚のいい餌になると聞いたあるおじいが、島にわざわざ持ちこんだらしい。たしかに持ちこんだおじいの家の敷地内はギンネムだらけだった。
 そこから広がったからなのかどうかは定かではないけれど、水納島内の手入れされていない土地には、ギンネムの立派な林ができている。
 結局今では、水納島で豚を飼っている人は1人もおらず、水納島に限っていえば、ギンネムはただの雑草以外の何ものでもなくなっている。ハブを駆逐させるためのマングースのように、安易にもともといない生物を移入させるとろくなことにならないという見本のようなものといえるかもしれない…。

 ところが最近になって、そんなギンネムでも唯一役に立つことがあることを知った。
 不幸があった際に四十九日までお墓の前面に作られる、茅葺屋根の骨組みに使用されるのだ。
 適度な太さがあり、ほぼまっすぐな幹なので、骨組みには格好の材料なのである。まるでサバイバーの隠れ家のように立派な屋根を見て、ギンネムの隠された実力を思い知らされた。
 とはいえそれで使われるギンネムの量は、年々増え続ける量に比べれば微々たるものだから、島からギンネムが消えることはまずないだろう。また今年もギンネムと島民との格闘が続くはずだ。