写真・文/植田正恵

51.「プレハブ雑貨屋」誕生秘話
月刊アクアネット2007年8月号

 4月に小さな小さな雑貨屋さんをオープンした。
 観光地のこと、何かひとつヒット商品を出せば老後は左団扇で悠々自適に…というほど世の中甘くはないけれど、おかげさまでオープン以来、島のお土産にという程度にはみなさんにご利用いただいている。

 その雑貨屋さんの建物は、去年までの4年間は夏の間バイト君たちの住居だった。パッと見は丸木作りのおしゃれなログハウスなのだけれど、実はそのように見えるよう作られたプレハブである。
 きちんとした家を建てる資金はなくとも、プレハブだったらなんとかなるかなと、借り受けた土地にプレハブ小屋を建てようと思い立ったのが5年ほど前のこと。ところがプレハブ業者さんに見積もりを出してもらってビックリした。島内に資材を運んでから組み立てるとなると、資材運搬および工事人夫の宿泊費など諸々を含めることになるので、たかがプレハブといえどとんでもなく高くつくことがわかったのだ。

 そんな金額になるプレハブなんて聞いたことがない!

 見積もりを見て即座にあきらめかけたところ、プレハブには、もともと組み立てられているものをユニック(クレーン付きトラック)に載せて現場に運ぶ、というものもあることを知った。

 そうすれば圧倒的に安くつく!!

 …が、そこで問題が。
 まず、プレハブを載せたユニックをどうやって島に運んでくるか。
 連絡船ではせいぜい牛や軽自動車ぐらいの大きさのものしか運べない。ユニックのような重機ともなるとバージ(台船)に載せるしかないのだ。時期によって価格に変動はあるものの、一回につき数十万〜100万くらいかかるという。
 いくらなんでもプレハブを運ぶために数十万というのはバカらしい。ああ、せっかくの方法も机上の空論だったか……。
 ところがそのとき、島内で大掛かりな公共工事があり、資材を運ぶために何度もバージが島に来る予定になっていることを知った。文字通りの「便乗」で、この問題は瞬く間に解決したのだった。

 しかしここでまた新たな問題が。
 島にプレハブを載せたユニックが到着したはいいけれど、はたして現場までの細い道を8トンユニックが通れるのだろうか??なにしろ島の道といえば軽自動車同士がやっとすれ違える程度なのだ。素人目にはどう見ても無理っぽかった。
 それでも我々も販売業者もあきらめきれず、念のためユニックの運転手に事前に調査してもらったところ、

 「8センチ(!!)の余裕があるからOK」

 とのことだった。
 結局、ありえないほどのギリギリの道を、ドライバーは確かな運転技術で、道沿いの壁にもプレハブにも傷ひとつつけることなく、難なく現場にプレハブを移送してくれた。

 このように、プレハブに限らず、地続きならたやすく出来ることが、小さな離島だと様々な制約のために大変苦労することになる。そのため面倒なので請け負ってくれる業者も少ない。
 「県内どこでも設置しに行きます!!」と豪語している大型電器店なんて、水納島ですけど…とひとこと伝えた途端、「水納島は無理ですね…」と言う始末である。

 まあ考えようによっては、これくらい不便なおかげで、あまりにも不釣合いな巨大な建築物が建設されにくいという利点があるわけだ。小さな離島には小さな規模のものが分相応ということなのかもしれない。我らが雑貨屋さんがどれほど儲かろうとも、あくまでもささやかな小さな雑貨屋さんでいなければならないのである。